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( ^ω^)或る雪国の記憶のようです


148 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:05:22 発信元:219.55.160.1 [3/14]


 闇夜に、雪が舞い散る。
 黒と銀の世界を貫いて、三本の赤い光が空を貫く。
 魔法の光だった。
 展開した魔法部隊が攻撃を開始したのだ。

 時間が凍ったかのような空気に、細氷が煌めいて消える。
 二つの国の存亡が、この戦いにかかっていた。
 躊躇う事は出来なかった。
 吹雪の夜に奇襲という手段をとる。

( ^ω^)「……全員、構え」

 ホライゾンの若き国王、名をブーン。
 いまだ未開と呼ばれるホライゾンの地の、実直な若者であった。
 防寒具と防具を両立させた毛皮の鎧が雪の中に揺れている。
 彼は強く、右手の剣を握りしめた。

 雪の中で長弓は満足に使えぬ。先手は魔法兵達でとった。
 現在、敵陣は僅かに隙が生まれている。
 迷いはあった。
 皆を危険にさらすことになる。

 ブーンは戦も喧嘩も大嫌いな男だ。
 しかし、剣を取った。自らの故郷を守る為に。
 多くの仲間が死に、今をして多くの仲間が戦っている。
 ゆえに迷っても躊躇わない。



149 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:09:02 発信元:219.55.160.1 [4/14]

( ^ω^)「……突撃」

 凍る世界に、ホライゾン王の号令が下った。
 兵士たちが咆哮をあげ、雪を斬り裂いて、走り出した。

ξ゚⊿゚)ξ「これで終わるね」

 ブーンの妻である、王妃ツンが小さく言う。
 自分達には今の戦を最後に平和が訪れる。
 そう、信じていた。

 二人の出会いは、ずっと前になる。
 生まれた時から共に生きてきた。
 ブーンの家系はホライゾンの代表を務めている。
 王になったブーンは、ツンを妻に娶った。

 人生を共有してきた二人は、それは良い夫婦であった。
 ホライゾンに平和な時間が流れる。
 しかし、時代の流れは混迷を導く。

 屈強なホライゾンの兵達は、知略を持たなかった。
 力だけで戦い敗北を重ね、今、何とかブーンの機転により反撃に転じたのだ。
 既に兵数は少なくなっていた。
 士気の為に、王と王妃が前線に出ねばならぬ程。

 確実に敵陣を進むブーン達の前に、一人戻って来た。

150 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:12:15 発信元:219.55.160.1 [5/14]

('A`)「……ブーン、か」

 血まみれで、友が戻って来た。
 顔には笑みが浮かんでいる。

('A`)「後、ひと押しだ……ギコも戦って……」

(;^ω^)「もういい、喋るなお。傷にさわるお」

 ドクオとも、長い友人である。
 だから分かってしまった、彼が死を悟っている事に。

('A`)「……頼む、ぞ……元の、俺達の……国を……」

 持ちあがった手が、ゆっくりと落ちた。
 また一人散った。
 友が死んでも、ブーンは泣く事は出来なかった。
 まず王として。そして、死に麻痺して。

( ^ω^)「ツン、ドクオを……」

 亡骸を頼もうとしたが、ツンは小さく首を振った。
 ここで自分だけが下がる事はしない。
 ツンは、そういった強さを持っていた。

 戦いの趨勢は傾いていた。
 勝利は見えている。
 剣を振っていたブーンに、ギコが伝えた。

152 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:15:47 発信元:219.55.160.1 [6/14]

(,,゚Д゚)「後は、任せる……俺は……平和を、願って……」

 伝えて、息を引き取った。
 勝利を目前にした、勇将の最期であった。
 ブーンは止まる訳にはいかない。

 雪は降り続ける。
 夜は明けない。

 数多の仲間たちが、友たちが戦いに消えた。
 隣で兵士が殺される。
 いつの頃からか、悲しみを覚えなくなっていた。
 自分の剣が、また一人、敵兵の命を砕く。

 見えた。
 敵陣に亀裂が走っている。
 ブーンは剣を振り上げた。

 雪雲に、一瞬の隙間が生まれた。
 銀色の月光が剣に宿る。

( ^ω^)「そこだお、進め!」

 剣を振り下ろす。
 雪が舞い、銀の月明かりが道を指し示した。
 刹那、もう月は雪雲に消えている。

154 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:19:37 発信元:219.55.160.1 [7/14]

 冷たい音が戦場を支配していた。
 騒音も血の匂いも、雪が消していくようだった。
 何もかも白く元通りに。
 心のどこかで、願った。

 それが最後の抵抗だった。
 隠れていた短弓の敵部隊が、一度だけ奇襲をしかけてきたのだ。
 兵士に死亡者はおらず、すぐに殲滅した。

 何が、不運を呼んだのか。
 王妃ツンの胸を、弓矢が貫いていた。
 信じられなかった。
 何故、自分を射抜かなかったのか。

(;^ω^)「ツン! しっかりするお!」

 大声で、ブーンは妃を抱きかかえた。
 あってはならない。
 自分より先に、ツンは死ぬ事は。

 ツンは、自分に起こった事をすぐに理解した。
 そして彼女らしい、強がった様な笑みを浮かべる。

ξ゚⊿゚)ξ「……大丈夫」

 ブーンは優しい人だ。
 ブーンは強い人だ。
 ツンは、確信していた。
 自分がいなくても、きっと国を導いてくれると。

158 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:23:04 発信元:219.55.160.1 [8/14]

 ここで、自分の一生は終わる。
 もうブーンと共に平和な国に生きる事は叶わない。
 それだけが、少し悲しかった。
 だが口にはしない。

 ブーンを悲しませるだけだ。

ξ゚⊿゚)ξ「……また作って……平和な、国を……」

 昔から意地っ張りだった彼女は、最期にまた強がりを言った。
 
( ^ω^)「……あぁ」

 ツンは、そういう女だ。
 だからブーンは答えた。
 作って見せる。
 約束する。

 戦いの終りに、ブーンの古い友人達は消えた。
 共に生きてきた妃も消えた。
 一人になった。

 止まらぬ雪。
 動かぬ時間。
 どれくらいそうしていただろう。
 戦勝の知らせを、兵士が持ってきた。



159 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:26:37 発信元:219.55.160.1 [9/14]


 悪夢が続いているようであった。
 景色は白銀に戻り、戦いの後は無い。
 反対に、ブーンの傍には誰も戻らなかった。
 ブーンは明け方に、雪にまみれて村まで戻った。

 戦いに勝ち、ホライゾンの地は守られたのだ。
 ブーンの名が歴史に知れるのは、ここからである。
 未開の大地より、突如として侵略が始まった。

 侵略者の王、ブーン・ホライゾンは大陸の北部を瞬く間に併呑する。
 文化国には信じられぬ事であった。
 蛮族たちが徒党を組んで自国を侵そうとしているのだ。
 戦々恐々とした、硬直状態が続いた。

 勿論、ブーンが狙った事だ。
 大国同士の睨みあいは、疑似的に戦を停滞させる。
 むしろブーンが重視したのは経済体制や福祉の方であった。
 確かに、平和な国は作られたのだ。

 国の名は、ホライゾン。
 友たちが愛した地の名である。

 ブーンの没年は知られていない。
 自身の死も、状況を変化させると考えて伏せたのだ。
 王の記録も残っている。
 政治に心を砕いていた事以外はめぼしい情報は無い。
 

160 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:29:18 発信元:219.55.160.1 [10/14]
 

 ブーンは一度、雪の降る故郷に戻った。
 村の面々は、敬意と親しみをこめて彼を出迎えた。
 疲れ切った顔の王は、何故か雪の降る真夜中に村を出た。

 気が付けば、雪原の真っただ中に立っている。
 若い自分はそこで剣を持って、毛皮の鎧を着て、多くの友に囲まれていた。
 戦いが終われば戻ってくるのだ。
 平和な毎日が。

 『だから、大丈夫』
 
 懐かしい声に振り向くと、やはり雪の中に自分はいる。
 老いた体が冷えた。
 暗く、だが白く見える景色。

 今、悪夢が終わった。

 目が覚めた。
 そんな気分である。


162 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:32:12 発信元:219.55.160.1 [11/14]

( ^ω^)「……ツン」

 長い時間が過ぎた現実で、彼は呟く。
 ブーンは明け方に、雪にまみれて村まで戻った。
 床に入っても朝には起きた。
 夜は開けて、雪も止んでいる。

 準備をして首都に戻ろうと外に出たブーンは奇妙な事を口走った。

( ^ω^)「……雪が降ってるお」



175 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:52:45 発信元:219.55.160.1 [12/14]

 現在、ホライゾンの名は地名として残っている。
 名以上の意味を多くの者は知らない。
 雪の中に消えて行った、多くの者達。

 歴史の中に溶けた雪。
 伝えられず、残らず。
 それでも時間は流れていく。

 ホライゾンの地に、雪は降る。
 だが、やがて止み、大地に溶ける。
 雪に生きた証は無い。

 例外が一つある。
 ブーンは雪の夜の戦いを生涯忘れる事はなかった。
 友たちの遺言どおりの国を作り、平和な時代が流れる。

 それでも。

 ブーンの心で、あの日の雪が止む事は無かった。
 きっと、彼の時間は閉じたのだ。
 雪の中を彷徨い、人生の終りに一度だけ僅かな時間、戻ってきた。
 そしてすぐに心は雪に閉ざされた。

 だからこれは夢の中の話。

 歴史に消えた、真冬の夜の夢。




178 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:54:24 発信元:219.55.160.1 [13/14]









( ^ω^)或る雪国の記憶のようです  end






182 名前:いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage] 投稿日:2010/11/21(日) 21:58:53 発信元:219.55.160.1 [14/14]
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>>148
>>149
>>150
>>152
>>154
>>158
>>159
>>160
>>162
>>175

以上で投下を終了します。
後半はお騒がせしました。

自主テーマは『真冬の世の夢』でした。
祭りを陰ながら応援しております。

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