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(´・ω・`)お祈りのようです



924 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:40:28.01 ID:9OCNLMwV0

武骨な柱時計が、ぼおんぼおんと室内の陰惨な空気を揺らす。
その振動が届かない外は黒煙のない景色が広がり、酷く陽気だ。

ささくれが目立つ縁側に腰掛け、茶を啜りながら二人は語る。


(´・ω・`)「あーあ、兄さん早く帰って来ないかなー」

lw´‐ _‐ノv「何処かで道草食ってるのかもしれんよ、お前とは違う理由で」

(´・ω・`)「酷な事を言うね君ぃ」

ずっとひと啜り。器には鶴が飛び立つ様子が描かれている。

(´・ω・`)「まあ兄さんの事だから、何かに首を突っ込んでるのかもしれないけど」

lw´‐ _‐ノv「突っ込んだ首が抜けなくなってる可能性が高いのねん」

(´・ω・`)「言わないでよ」


雲を切り裂き、轟音を撒き散らし、V字の編隊を組んだ渡り鳥が頭上を飛ぶ。

きっと、別の国から階段を登れと言われたんだろう。
そのまま昇った先に住んでしまい、住み心地の良さに帰らないんだろう。きっと。

926 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:42:28.35 ID:9OCNLMwV0

(´・ω・`)「兄さん、本当、いつになったら帰って来るのかなあ……」

lw´‐ _‐ノv「お前の兄の年を越してしまったよ、わたしゃ」

(´・ω・`)「そうだね。君もこんなとこにいるよりは自分の人生を省みて、
       有効的に時間を消費したほうがいいと思うよ。自分の為に」

lw´‐ _‐ノv「動くの面倒」

(´・ω・`)「嘘つき」


間を作って茶を啜ろうとしたが、器は既に空だった。


lw´‐ _‐ノv「お前の兄はノロマだね」

(´・ω・`)「兄さんの動きが俊敏過ぎて、小学校の時『鼠』ってあだ名つけたのは誰だい」

lw´‐ _‐ノv「誰だったかねえ」

(´・ω・`)「ノロマや愚図呼ばわりされていたのは僕のほうだったよ」

lw´‐ _‐ノv「そんな事をほざいた奴らを袋叩きにしたのは鼠じゃないかい」


かんらかんらと高く笑う。


927 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:44:09.91 ID:9OCNLMwV0

(´・ω・`)「茶が空になったよ、僕は二杯しか飲んでないのに」

lw´‐ _‐ノv「喋ると喉が渇く」

(´・ω・`)「話す相手ならいくらでもいるでしょ」

lw´‐ _‐ノv「私がここで喋るのは、雨宿りの時に狭い一つ屋根の下二人きり、
       場が険悪にならないよう世間話をするのに近いよ」

(´・ω・`)「何それ」

lw´‐ _‐ノv「雨が止むのを待つ会話とほぼ同じだよ、これはね」

(´・ω・`)「今は晴れだけど」

lw´‐ _‐ノv「でもお前とは他人じゃないから、二人での雨宿りだね」

(´・ω・`)「会話してくれないかなあ……」

lw´‐ _‐ノv「しとるよ」


右手で扇ぎ続けていた団扇を、口元に持っていく秋。
団扇には子供の頃に描いた落書きがまだ残っていて、少々恥ずかしい。


930 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:46:20.77 ID:9OCNLMwV0

lw´‐ _‐ノv「絶望的な待ち程退屈で、不安で、少し恐ろしく、希望が薄い」

(´・ω・`)「雨降り?」

lw´‐ _‐ノv「雨降りで考えればいい」

(´・ω・`)「……えと、そうだね。予報でずっと雨とかなったらうんざりするね」

lw´‐ _‐ノv「ふふ、雨が早く止むよう、どうやって祈る?」

(´・ω・`)「どうやっても何も、『早く止みますように』としか」

lw´‐ _‐ノv「そうさね、それが普通さね」

(´・ω・`)「それ以外思い浮かばないよ」

lw´‐ _‐ノv「その祈りが狂って届いて、爆弾で晴れたらどうする?」

(´・ω・`)「どうするって」


どうしようもない。の一択しか自分の中にはない。
 
 
931 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:50:50.60 ID:9OCNLMwV0

lw´‐ _‐ノv「変なの問うてすまんね」


謝罪のつもりなのか、自分に送り続けていた風を僕に向かって送り出す。


(´・ω・`)「どう祈ればよかったの」

lw´‐ _‐ノv「自分もちっともわかりゃせん」

(´・ω・`)「何それ」


柵の向こうから、子供たちのはしゃぐ声が聞こえる。
下校時間はもう過ぎた。隣の空き地で遊ぶに違いない。


lw´‐ _‐ノv「お前は、兄にどう祈ってる?」

(´・ω・`)「それは『早く帰って来ますように』と」

lw´‐ _‐ノv「駄目よ、それだときっと駄目さね」

(´・ω・`)「どうして」


932 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:52:23.78 ID:9OCNLMwV0

lw´‐ _‐ノv「一人でするお祈りだと、危険に気付けない」

(´・ω・`)「何か間違ってるの?」

lw´‐ _‐ノv「君はなんにも間違ってないよ、ただそのお祈りは危ないよ」

(´・ω・`)「危ない?」


扇ぐ手を休めて、真っ直ぐにこちらを見る秋が横目で見えた。
真面目な顔付きの秋は慣れない。何となく視線が合わせ辛い。


lw´‐ _‐ノv「私の婚約者、遠征に行ってしまって」


口を挟めてはまずい気がしたので、無言を貫く。


lw´‐ _‐ノv「私は彼に早く帰って来て欲しくて、会いたくて、毎日お祈りをしたよ」


lw´‐ _‐ノv「『彼に早く会えますように』」


lw´‐ _‐ノv「お祈りは通じて、彼は帰って来たよ」


933 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:54:07.80 ID:9OCNLMwV0

lw´‐ _‐ノv「無事に帰ってくるはずだったのに」


lw´‐ _‐ノv「特攻隊員に選ばれて」


lw´‐ _‐ノv「電報で散華と伝えられて」


lw´‐ _‐ノv「持たせたお守りと歯だけ帰って来た」


lw´‐ _‐ノv「それすら戻って来れたのは奇跡だって」


lw´‐ _‐ノv「届けた偉いお人が言うとったけど」


lw´‐ _‐ノv「確かに、早くは帰って来たけど」


lw´‐ _‐ノv「わたしゃあねぇ」


934 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:55:34.73 ID:9OCNLMwV0

いきなり、秋からぎゅうと抱きつかれる。
何をしたらいいのか話せばいいかわからず、そのまま固まる。


lw´‐ _‐ノv「お前は弟も同然だよ、動きの鈍い可愛い子」

(´・ω・`)「貶してるの?」

lw´‐ _‐ノv「ううん優しい子、そのまま大きくなってほしい」

(´・ω・`)「もう大人だよ」

lw´‐ _‐ノv「そうさね」


そう言って僕の頭を撫でる手は、ちびを慰める手付きと一緒だ。
確かに、年から見ても、九つも下だとずっと子供に見えるかもしれない。


(´・ω・`)「でも、もう子供じゃないよ」

lw´‐ _‐ノv「無理よ、あなた臆病で優しい子だから」


936 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 12:58:38.78 ID:9OCNLMwV0

(´・ω・`)「大人だよ」

lw´‐ _‐ノv「死んだ人すら思いやる子だから、無理でしょう」


背に回していた腕を解いて、にっこり微笑みかける。


lw´‐ _‐ノv「あの時、あなたは『そんなお祈りしないほうがいい』って」

(´・ω・`)「言ったっけ?」

lw´‐ _‐ノv「言ったよ、ちゃんと言ってくれたのにね。ちゃんと聞けばよかった」

(´・ω・`)「それ、僕は」

lw´‐ _‐ノv「いいの、言った意図と違っても、自分がそう解釈したの」

(´・ω・`)「……」


937 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 13:00:20.86 ID:9OCNLMwV0

lw´‐ _‐ノv「そのお礼さね、ここにいるのは」

(´・ω・`)「お礼?」

lw´‐ _‐ノv「鬱陶しいでしょうけど、待ちの祈りは多いほうが間違わない時もある」


後ろめたい気持ちが、藍染めのように染みていく。


lw´‐ _‐ノv「もう一度お祈りしよう、間違わないように、今度は二人で」

(´・ω・`)「…………」

lw´‐ _‐ノv「ほら」


しゅうが指差す空には、V字が遺した五線譜がある。
線を引いた者達は、碌なメロディを奏でられないに違いない。

それでも、どうかせめて、最期に綺麗な和音になるよう祈る。


938 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/25(月) 13:01:46.44 ID:9OCNLMwV0




(´・ω・`)「『兄さんが……無事、に、帰って来ますように』」


lw´‐ _‐ノv「『しょぼのお祈りが、ちゃんと通じますように』」



空はいつしか紺色になって、偵察用の飛行機がちかちかと瞬いていた。



 (了)



940 :(´・ω・`)お祈りのようです:2010/10/25(月) 13:03:21.86 ID:9OCNLMwV0

投下終わります

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