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夢から醒めるようです


259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:20:22.51 ID:uTvDILiZO [4/14]

 夢から醒めるようです


心臓の動きを計るモニタがそっけなく波形を流す。
薄暗い病室には男が二人、ベッドに眠る女を挟んで会話していた。

( ・∀・)「俺達がこうして会うのも何回目だろうな」
  _
( ゚∀゚)「100から先は覚えてねぇ」

初めの男は乾いた声で短く笑った。

( ・∀・)「事故から一年か」
  _
( ゚∀゚)「ああ…」

从 -∀从 スゥ…スゥ…

女の体には何本もの管が巻き付いていた。



263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:23:24.17 ID:uTvDILiZO [5/14]
女の名はハインと言った。
彼女は男達の同僚であった。

同期の三人は職場を出ても仲が良く、しばしば休日を共にすることもあった。
とある事故が起きるまでは。

ハインはトラックの脱輪事故に巻き込まれたのだ。

ある日の夕方、彼女は隣を歩いていた妹に激しく突き飛ばされる。
正確には、その妹も時速60kmで迫ったタイヤに撥ね飛ばされていた。

巻き添えを食ったハインですらこの有り様。
妹の方は言うまでもなく…。

医師の話では、意識が回復するかは全く分からないということだった。

( ・∀・)「…」
  _
( ゚∀゚)「…」

264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:28:47.01 ID:uTvDILiZO [6/14]
二人は暇さえあれば、眠り続けるハインを見舞った。
真摯な姿勢が看護師達の胸を打ち、夜中の面会を許されるようになった。

季節が移り変わり、雨が、雪が降った。
月夜の晩も三人は一緒に静かな時間を過ごした。
  _
( ゚∀゚)「…また無駄になっちまったか」

二人目の男は果物籠を取り替え、花瓶の水を流しに空けた。

( ・∀・)「そんなことはないさ。いつ起きてもいいように準備してやらないと」

初めの男が疲れた目元を穏やかに細め、言った。
それ以上、二人は特段言葉交さずに部屋を出た。

夜勤の看護師に会釈をし、そのままロビーを抜けていく。

266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:31:18.86 ID:uTvDILiZO [7/14]
初めの男、モララーは気付いていた。
二人目の男、ジョルジュもまた、同じことに気付かないわけがなかった。

『アイツはハインのことが…』

( ・∀・)「明日は来られないんだったっけ」
  _
( ゚∀゚)「出張でな。すまんが頼む」

病院の出入口で二人は別れた。
あとはお互いの車まで歩き、振り返らずに帰路へ就いた。

モララーはラジオ番組を聞き流して、小箱のことを考えていた。
ハインが事故の日、手にしていた箱だ。

奇跡的に原形を留めていたそれは、落ち着いた包装のなされたプレゼントのようだった。
ジョルジュも同じ感想を抱いたようだったが、誰に宛てた物なのかはわからなかった。

( ・∀・)(…事故は俺の誕生日の2週間前だった)

モララーは小さく呟きながら、アクセルを緩く踏み続けた。

268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:33:10.66 ID:uTvDILiZO [8/14]
翌日、ジョルジュが新幹線の座席で考えていたのは、やはり小箱のことだった。
  _
( ゚∀゚)(俺の誕生日祝いをいつか渡すと言ってたよな…)

「きっと自分が」という考えに至ると、彼は頭を振った。
彼女の口から聞くまでは、手ずから渡されるまでは、分からないのだ。

自分はモララーと全くの平等な立場である。
彼には自分勝手な判断をしないだけの分別があった。
  _
( ゚∀゚)「でも…」

あわよくば。

そんな希望を捨てきれないからこそ彼は見舞いを続けた。
世話をし、ハインの家族を慰め、そして――
  _
( ゚∀゚)「…」



自分は親友を、モララーを見張ったのだ。



269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:35:20.27 ID:uTvDILiZO [9/14]
モララーは一人で病室を整えハインの髪を撫でた。

( ・∀・)「ハイン、いつ起きてくれるんだ?」

伸び放題の髪はツヤを失い、指通りが悪かった。
モララーの指は髪から頬、唇へと滑っていく。

( ・∀・)「…」

劣情がモララーを襲った。
唇を奪いたい、この手で細くなってしまった彼女を抱きたい。

そうすれば、眠り姫のように目覚めが――

( ・∀・)「…何を考えているんだ僕は」

学生時代、利己心から女性を傷付けた経験が彼の胸を突いた。
心を満たし始めた鈍い痛みが、彼の手をポケットに戻させた。

ちらりと、サイドテーブルの小箱を見る。
脳裏に親友の顔が浮かび、モララーは目を伏せた。

後悔のないよう、僕らはこうしているのだ。
「これ」の行方を知るために。

…ハインの心を知るために。

モララーは病室を出た。

270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:37:33.32 ID:uTvDILiZO [10/14]
***

ハインが、目覚めた。

从 -∀从「ん…」

ちょうどその日はモララーが席を外していた。
寒い、雨の日だった。

一人、ジョルジュは体を固めてハインの声を聴いた。

从 -∀从「あれ…あれ? こ、ここは…」

かすれた声がジョルジュの耳をくすぐった。
花瓶を持つ手から力が抜け、唇がわなわなと震えた。
  _
(;゚∀゚)「ハ…イン…」

从 ゚∀从「ジョルジュ…ジョルジュ? あたしは、一体?」

ジョルジュは一も二もなく彼女を抱き締めた。
涙も嗚咽もなく、ただハインをその腕で包み込んだ。

从 -∀从「なんだよ…一体…」

ハインは始め戸惑っていたが、言葉少なに彼の背を叩いた。
その度に、腕に繋がったチューブが揺れた。

272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:39:45.10 ID:uTvDILiZO [11/14]
ハインは事故の詳細を聞くにつれ、顔を青くしていった。
妹の死、一年以上の昏睡、痩せた胸、衰えた体。

ジョルジュは彼女に全てを伝えることこそがフェアであると考えた。
遠回しに知り、曖昧な不安を抱えるよりかは、と。

だからこそハインが辛そうにしていても最後まで話しきった。
「小箱」は無事で、そこにあることもさりげなく、しかし、抜け目なく伝えた。

从 ∀从「ちょっと、一人にしてくれないか」

ジョルジュは頷き、病室を後にした。
そこでようやく、看護師やモララーに彼女の目覚めを伝えなければならないことに気が付いた。

274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:43:10.82 ID:uTvDILiZO [12/14]
モララーは電話口で歓喜の叫びを上げ、ジョルジュの耳をつんざいた。
仕事先に断りを入れて翌朝には病院へ来るという。

綻んだ顔でジョルジュがロビーの椅子にいると、看護師が駆けてきた。
冷静さを求められる彼女らも慌てることがあるのだな、とジョルジュは呑気に構えていた。

しかし

「ハインさんが失踪しました」

それも束の間のことであった。
  _
( ゚∀゚)「えっ?」

ジョルジュは缶コーヒーを取り落とし、中身を床にまいてしまった。

278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:47:56.80 ID:uTvDILiZO [13/14]
从 ∀从「そんな、こと、あっていいわけないじゃん」

タクシーの中で、ハインはうわ言のように繰り返した。
彼女にとって幸か不幸か、運転手は厄介事を嫌う性質であった。

だからこそ彼女の患者服には執着せず、言葉を気にすることもなかった。
彼は、こんな冷え込む雨の夜に面倒ごとを抱え込むには、少々薄情すぎた。

物臭な運転手が目的地に到着したことを告げると、ハインは料金を支払った。
転がるように雨天の下へ出ると、ハインは探した。

曲がったガードレール、歪んだポール、血溜り。
それら事故の痕跡はない。

从 ∀从「どこ…どこだよ…」

ない。どこにもない。
新しく整備された道路には、手向けの花も見つからない。

从 ;∀从「どこにいるんだよぉ…」

彼女が探すものは見つからない。
失われた物は――見つからない。

冷たい雨が彼女の体を切り裂いていく。
ハインの体から熱が逃げていく。

命が、削がれていく――

284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/11(月) 23:56:34.14 ID:uTvDILiZO [14/14]
***

『衰弱した女性が路上で亡くなった。現場は、奇しくも女性が事故に遭った場所――』

ハインの最期自体は、ほんの数秒で片付けられた。
ニュースキャスターは話題を過去の脱輪事故に移した。

賠償、リコール、ドライバーの過失。
断片的な単語を耳に入れながら、ジョルジュは自らの禁を破った。

  _
( ゚∀゚)「……これは」


それを見て、彼はゆっくりと膝をついた。

  _
(  ∀ )「は、ははは……あは、そうか……」


完全なる喪失感が彼を襲った。

雨は、振り続けた。

通夜の晩まで、静かに、さめざめと泣くように。


288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/12(火) 00:02:01.08 ID:M6RPNTfIO [1/7]
会場の外で、モララーはジョルジュを責めた。

どうして離れた、一人にした、答えろ。

モララーは不器用にジョルジュの顔を殴った。
経験のない行為にモララー自身が驚いた。

感情に抑えがきかなくなっていた。

切れた唇を拭い、しかし、ジョルジュは口を開かなかった。
何とか言えよ、と胸を掴まれても目を反らすばかりだった。

ひとしきり罵られた後、ジョルジュは「小箱」を取り出した。
一言、「お前にだ」と呟いて。

( ;∀;)「……ッ」

彼は小さな箱を胸に押し付け、床にうずくまった。
絶望だけが彼を支配したのではなかった。

自分が選ばれたことによる黒い満足。
親友であり、恋敵であったジョルジュに勝ったという不謹慎な喜び。

言葉にならないヘドロのような感情が彼を埋め尽した。
モララーはしばらく、会場に戻れなかった。

ジョルジュにどのような顔をすればいいか、気持ちがまとまらなかったのだ。
笑うことも怒ることもできない。

291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/12(火) 00:06:56.99 ID:M6RPNTfIO [2/7]

望んでいた結果が、彼を悪夢の中に引きずり込んだ。

ある種の呪いのようだった。

彼が自身を解放することはできそうになかった。

一年もの思慕は、緩やかに彼を縛っていた。

想うという呪縛が彼をこれまで生かしていたのだから。

( ;∀;)

膝が冷え、脚が痺れてもモララーはそこを動けなかった……。


293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/12(火) 00:14:24.29 ID:M6RPNTfIO [3/7]
ジョルジュは車の中に入ると、長らく禁じていた煙草に火を点けた。
  _
( -∀-)「…」

煙が目にしみて、ジョルジュは瞼を閉じる。
そして、肺に重たい煙を満たしながら、ポケットの中で紙を握り潰した。

モララーには話していない、小箱に入れられていた、たった一行の手紙。
プレゼントを宛てた相手への、最愛の印。
  _
( -∀-)「…」

窓を開けると霧雨が車内に舞い込んだ。
紫煙と混ざり合い、水滴はジョルジュの顔を洗う。

切れた唇を舐めると、少し鉄と塩気を感じた。
ジョルジュはその味に、生を覚えた。
  _
( ゚∀゚)

ジョルジュは、会場を後にした。
夢から醒めたように、目を開けて。

夢に見た、幸せな瞬間を忘れるように、朝に向かって車は走る。

294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/12(火) 00:19:40.91 ID:M6RPNTfIO [4/7]

プレゼントに同封されていた手紙には、愛が溢れていた。

『たった一人の愛する妹へ』

ただ一人の男だけがそれを知っている……。


 夢から醒めるようです

  お し ま い

296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2010/10/12(火) 00:21:24.56 ID:M6RPNTfIO [5/7]
以上。支援ありがとうござんした。

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