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おっちょこちょい、のようです


416 名前:おっちょこちょい、のようです[sage] 投稿日:2010/08/29(日) 02:26:08 ID:OnMW.4Sw0 [4/26]
ふと気がつくと、夜の空にふわふわと浮かんでいた。
この辺りは都会なので星も見えないが、遠くで白く光る半分の月が綺麗だ。

下を見ると何軒か家があり、どれも似たような屋根に似たような造りだった。

ぼんやりと、どうして自分がこんな所にいるのか考えてみる。
どうやってこんな所まで来たのかとか、そもそもどうして自分は浮かんでいるのかとか
とても不思議なのだが、どうしても思い出せないし分からない。

それに、今とても良い気分なのでそんな事はどうでもいい気がしてくる。
体が軽くて、このまま遠くにあるあの月にまで飛んでいけそうだ。

でも自分の意思で思うように、自由にスイスイとは動けない。
上の方にゆっくりと、頭を優しくひっぱられているように、昇っていっているのに気がつく。

足元にある家々が、次第に小さくなっていく。
さっき屋根を眺めた時より、もう随分遠くだ。


417 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:27:18 ID:OnMW.4Sw0 [5/26]
このままどんどん昇っていくのは楽しそうだな。
嫌な事とか、面倒くさい事とか、全部忘れられる気がする。

―――あ、でも。
このまま一人で行くのは、なんだかとても寂しい。
それに、俺がこのまま行ってしまったら、幼い妹者は泣くんじゃないだろうか。

急に、家族がみんな、悲しんでいる顔が浮かんだ。
すると、今までのふわふわした気分は一瞬にして消えてしまって、急激に寂しさが募ってきた。

家に帰らないと。
そう思うのだが、体はゆっくり上昇を続けていって、沢山の屋根はどんどん遠くなる。

慌てて体を動かそうと暴れてみる。
でも、まるで水をかいているみたいにから回りするだけだ。

419 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:28:23 ID:OnMW.4Sw0 [6/26]
帰りたい 帰りたい

このまま昇っていってしまったら、二度と家族に会えない気がした。
学校の友達にも。好きな人にも全部。

だから必死に下へ戻ろうと足掻く。
でも夜の空の真ん中で一人、どうする事も出来ない。

暴れても無意味な事が分かり、絶望して動きを止めた。
もう帰れないのかとがっくりきて俯くと、
足元にもう大分小さくなってしまった家々が見える。

すると、同じように並んだ、同じような色と形の屋根の中で
ある一軒の家だけが、はっきりと自分の家だと確信できた。

生まれてからずっと住んでいる自分の家だが、上から見るとこんなだったのか。

そう思って眺めていると、フと、自分の足元から白い光の糸のような物が
自分の家に向かって伸びているのに気がついた。

420 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:29:32 ID:OnMW.4Sw0 [7/26]
さっきはこんなもの見えなかったけれど。
不思議に思いつつ、そうだ、これを伝って下りていけば
家に帰れるかもしれないと思いついた。

どうしても家に帰りたいと、必死の思いでその糸に手を伸ばす。

すると、手が糸を掴んだ瞬間、もの凄い勢いで下の方に体を引っ張られ
あっという間に自分の家の屋根に飛び込んでいった。

場面は目まぐるしく変わり、夜の空から、屋根から、見慣れた家の中へ。
壁や物にもぶつからず、体が通り抜けていくのを不思議と思う暇も無かった。

そして気がつけば、自分の部屋の中にいて。

体は依然、ふわふわと浮かんでいる。

吸い寄せられるようにベッドまで近づき、中を覗き込むと、そこには自分が眠っていた。

(-<_- )

自分の寝顔を自分が見下ろしているというのは、なんだかゾッとしたが
それより何よりも歓喜の気持ちの方が大きかった。
ああ、自分は帰ってこれたのだ!
安堵の気持ちのまま、自分の体にスッと潜り込んだ。

421 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:30:28 ID:OnMW.4Sw0 [8/26]
(´<_` )「……ん」

目を覚ますと、部屋の中は日の光が差し込んで明るく、もう朝のようだった。
ぼうっとした頭で、つい先ほど、夜の空に浮かんでいた時の事を思い返す。

やけにリアルな感覚だったが、唯の夢だったのだろうか。
気分の高揚の余韻が、未だ残っている。

いや待てよ。
自分の体から伸びる光の糸、寝ている自分を空中から見下ろす。

そうだ。本やTVで、似たような話を見たことがある。
あれは……幽体離脱というやつじゃないか?

すると、やはりあのまま昇っていったら自分は死んでいたのだ。
そう考えると、急に寒気が全身に走った。

(´<_`;)(死ぬとこだったのか……)

恐怖で心臓がぎゅっと縮まる。
だがそれと同時に、ついさっき自分がした不思議な体験を誰かに話したい衝動にかられて
布団を跳ね除けベッドから勢いよく起きた。

422 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:31:30 ID:OnMW.4Sw0 [9/26]
(´<_` )「なぁ聞けよ!さっきすごい体験したんだ!!」

そして、向かい側のベッドでまだ寝ているであろう、双子の兄弟を起こしにかかる。

(´<_` )「おいってば!もう朝だぞ、起きろよ!」

朝からこんな大声を出すと母者に叱られるかもしれないが、興奮が抑えきれなかった。
けれど、これだけ騒ぎ立てているのに、そいつはベッドに横になったままピクリとも動かない。

(´<_` )「なぁ、今な!俺な……え?」

いつまでたっても起きないので、体を揺すってみる。
そこで、違和感を感じ、はっと腕を放した。

(  _ゝ)

(´<_` )「……弟者?」

俺が触った“弟者”の体は、何故かとても冷たかった。

423 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:32:28 ID:OnMW.4Sw0 [10/26]
l从;д;ノ!リ人「うあぁんおっきい兄者あぁ」

( ;ω;)「兄者……なんで急に……」

家族や友達が、俺の名を呼んで泣いている。
棺の中で眠っているのは、すっかり青白くなった俺の死体だ。

そしてその顔を見下ろすのは、黒い喪服に身を包んだ“弟者”である俺。



俺は間違えた。



自分の還る体を、外見のそっくりな双子の弟と間違えて、そのまま入ってしまったらしい。

そして本物の弟者は、俺と入れ違いに体から出て行って
後は何処か……恐らくもう戻ってこられないであろう
何処かに行ってしまったというわけだ。

今棺に入れられているのは
一晩幽体の無いまま放置されて、生き物としての機能を停止させてしまった俺の体。
俺が本来戻る筈だった、自分の体。

424 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:33:10 ID:OnMW.4Sw0 [11/26]
そういえば、弟者にもよく言われてたっけな。

「兄者はおっちょこちょいだから、もっと考えて行動した方がいい」って。

ごめんな弟者。夜中で暗かったし、興奮してて考える余裕が無かったんだ。
弟者に心の中で謝罪する。きっと聞こえてはいないだろうけど。

弟者は何処に行ったんだろう。
俺と同じように、あの夜の空をふわふわ上昇していったんだろうか。
その行方はもう誰にも分からない。

本当にいなくなったのが誰なのかも。

遺体の周りに一本ずつ花を添え、皆が涙を流しながら別れを告げる。
俺もその青白い顔を覗き込み、まだふわふわしている気持ちのまま呟いた。

(´<_` )「……さよなら。“兄者”」

(  _ゝ)

葬式会社の男の人達によって、“兄者”の眠る棺の蓋がゆっくりと閉められた。

426 名前:おっちょこちょい、のようです[] 投稿日:2010/08/29(日) 02:34:01 ID:OnMW.4Sw0 [12/26]
58本目おわりです。支援ありがとうございました。

  (
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