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( ^ω^)指が全て親指になってしまったようです


1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:34:26.68 ID:3CU6Z4AS0
  --か(変・代・替・換)わってしまった--

 読者諸君。スレタイを見てこのスレッドを覗いてくれたのだろう。
ならば話は簡単だ。私の指が全て親指になってしまったのである。
無論、左右両方で、物がつかみにくくてどうしようもない。

 缶コーヒーを両手首で挟んで口に運ぶ。砂糖もミルクも入っていない苦味はいつもと変わらなかった。

 現在の時間は朝七時で外からは鳥のさえずりが聞こえてきている。のどかな朝の風景だ。
昨日と何ら変わりのない風景。そして私は原因の解明をするため、昨日のことを思い出した。

 まず、私は昨日から寝ていない。そして昨日までは指は全て長さ・太さが違っていた。
親指、人差し指、中指、薬指、小指が生えそろっていた。ああ懐かしき健常な指。

 誤解しないで頂きたい。私が解明しようとしているのは『原因』である。
どうして親指にか(変・代・替・換)わってしまったのか、皆目見当もつかないので原因を究明しているのだ。
か(変・代・替・換)わってしまった時間はハッキリと覚えている。午前六時五十九分五十六秒のことだ。

 一瞬だった。本当に一瞬だった。いや、一瞬すらもそこには存在していなかったのかもしれない。
気づくと、か(変・代・替・換)わっていた。私はその時間、じいと両手を見続けていたのだ。石川啄木の如くただ、じいと。
ここで読者諸君に勘違いして欲しくないことがある。それは私が貧困な者であるということだ。それは誤解である。

 私は世界でも有数の大富豪である。
庶民、飢餓。その日暮らしが精一杯である者たちの気持ちを理解するために手をじいと見ていたのだ。
私の両手はその瞬間まで何も変わらない、巨万の富を生み続ける指であった。

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:36:23.09 ID:26hM9S780
期待

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:41:03.49 ID:DKo0zZCg0
構わん、続けろ



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:49:15.04 ID:3CU6Z4AS0
 指一つで億単位の金を手に入れる、というとどうにも想像がつかないかもしれない。
だがその実とても簡単な方法で、一般人もやっていることだった。株である。安いときに買い高いときに売る。ただそれだけ。

 と、まあ、その指がなくなってしまった。どこかへと消えてしまったのだ。
午前六時五十九分五十五秒から午前六時五十九分五十六秒になった瞬間に。
凝視していたと言っても過言ではないのに、私は瞬間が理解できなかった。ただ、か(変・代・替・換)わってしまったのだ。

 悩んでいても仕方が無い。なってしまったものはどうしようもないのだ。
過去をずるずると引きずるのは何もいいことが無い。気にせず前進し続けるのだ。

 体を横に振り動かす。ぎい、と座っている椅子から音がした。
背中からぼきぼきと骨がなった。いつもと同じだ。そう、同じなのだ。ただ五指が親指になってしまっただけ

 缶コーヒーを飲み終える。黒檀の机に置いて、その隣にあるノートPCに私は触れた。
慣れない指でタイピングをする。どうにも文字が思い通り打てない。マウスを握ることすら困難だった。
親指とはもっとも重要な指のくせにどういうことだろう。親指がないとものが掴めないのに、全てが親指でもものが握れない。

 構わずに文字を打ち続ける。画面には「sftdywadiわんdfさ」と表示された。
ああくそう。しまった。そうだそうだ。両手でマウスを挟むようにすればいいのだ。そうすれば問題はない。
タイピングもゆっくりゆっくりと一文字ずつ打ち込めばいいのだ。覚えたてのように。ブラインドタッチなんて不要だ。

 お気に入りの☆マークへとカーソルをあわせる。白い矢印はぷるぷると震えている。
左クリック。とてつもない量の文字が表示された。しまった。お気に入り登録をしすぎていた。
だが気にすることはない。私の仕事をするサイトは一番上なのだ。ゆっくりゆっくりと標準をあわせる。

( ^ω^) いまだ!

 カチッと音がした。気合を込めすぎたせいで立ち上がってしまった。しかし立ち上がる動作の途中で私は前に倒れこんだ。
黒檀の机にダイブ。でっぷりと太った腹に潰されるノートPC。机の端でこぼれる安い缶コーヒー。なんということだ。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:50:27.03 ID:NHSv9m9K0
タイトル見た瞬間に想像してゾっとした
支援

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:51:03.22 ID:yFFDUTpC0
いいぞもっとやれ

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 22:52:14.87 ID:Zz+9qpsh0
足の指が全部人差し指に!

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:02:46.28 ID:3CU6Z4AS0
  --何も問題はない--

 私は机に手をついてじょうたい(上体・状態・常体・情態)を回復させる。
身体を起き上がらせる際、指を開いて体を浮き上がらせようとしたが力が足りなかった。
ここでも手首を使った。手首とはかくも役立つものだったのか。自殺するによし起き上がるによし、万能だ。

 親指よりも手首が有益なことがわかった今、私はとりあえずノートPCと缶コーヒーを思い切り押しのけた。
机を地面を見立てて低空ラリアット右から左へと繰り出したのだ。薙ぎ払われて飛んでいくノートPCと缶コーヒー。
私はこの部屋に敷かれたペルシャ絨毯の上に横たわった無機質なその二つを見て鼻息を鳴らした。どんなもんだ。

 視線を少し右に向けると、ノートPCが二台見える。近い方の一台を引き寄せようと手を伸ばした。
だが、大方の予想通り掴めず、掴めても力が足りなかったため私は椅子をからからと動かして移動した。
気分は小学生である。ぐるぐると回ってみようか。それとも家政婦を呼んで後ろから押してもらおうか。

 する気もない雑念を脳裏に浮かべながらため息をついて、目の前のPCに手を伸ばす。
同じ過ちは犯さないのが私のいいところだ。お気に入りを開き、仕事のページを開く、折れ線グラフが見える。

 それからしばらく私は仕事をした。
慣れない指なもので動作は緩慢で慎重になったが、さしたる問題はなかった。
今日も昨日と変わらず指で億単位の金を得た。何も問題はないのだ。指は全て指であってエンターキーを押せればそれでいいのだ。

 エンターキーと左クリック。
この二つができれば億単位の金を手に入れれる。指など関係ない。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:12:29.67 ID:3CU6Z4AS0
  --ここで少し考え込む--

 一仕事を終えた私は立ち上がろうとした。
ここで違和感である。先ほど倒れこんだ時と同じような感覚。私は間一髪じょうたい(上体・状態)を戻した。

( ^ω^)ううん?

 私は毎日、仕事を終えると伸びをする。そして時刻を確認して床に就くのだ。

 もう一度立ち上がろうとする。やはり違和感。おかしい。
両の手に親指がついているだけでなぜ立ち上がる際に違和感が生じなければいけないのか。

( ^ω^)ええい

 肘掛に手のひらを突き出して勢いよく立ち上がった。
掌底と見間違うような勢いで繰り出したため、肘掛が爆散した。木屑が散る前に私は立ち上がっている。
だがやはり違和感だ。足元に違和感がある。いや、正確には足元ではなく足の指先……。

 生後数ヶ月の子供や酩酊した者のように足元が覚束ない。
そのまま数歩歩いてどたあん、と大きな音を立てて私は前のめりに倒れこんだ。ここでも私の前進主義が表れている。

 腹にちくちくとした感覚がある。おそらく飛び散った木屑のせいだ。
掌底など繰り出すべきではなかった。妙にこそばゆく、私は芋虫のように這って木屑地帯から逃れた。
畜生この私が這いずるとは。覚えていろ。私は空高く飛ぶ鳥であるはずだ。くそ。自分を叱責する。これでもう二度と同じ過ちはすまい。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:15:10.89 ID:mRnZezIo0
立ち上がるまで気づかなかったのか

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:21:55.93 ID:3CU6Z4AS0
 自責の念にか(駆・刈・狩)られながら壁際まで到達した。
その間左手はずっと髪を掴んでいた。短い親指でも髪の毛は毟れるものだ。それを見て心身はボロボロだ。

 壁に背をつけて一息はく。はあ、机を見ると、十メートルほどしか離れていなかった。
いつもなら悠々と進んでいる距離がこんなにも遠く感じるとは。直立二足歩行万歳。

 体を丸めて靴下へと手を伸ばす、そして剥ぎ取るとやはり足の指全てが親指になっていた。
これではバランスがとり辛いにきまっている。驚きはなかった。
想像していたこととあまりにも合致していたため納得ができ過ぎて半ば呆れてもいた。

 壁を支えにして立ち上がる。体重を壁に預けて立ち上がるのだ。
膝を伸ばし終える。いつもならここから簡単に歩きはじめるのだ。
だが私の体はぐらぐらと揺れて体幹を捜している。どこだ中心どこだ中心。

( ^ω^)いまだ!

 決心して足を踏み出した。

 一歩目。右。よし、いけるぞ大丈夫。
二歩目。左。ぐらついてきたが大丈夫だ。
三歩目。右。ああ、だめだ。転んでしまう。

 再び、私が打ちつけられる音が部屋中に響く。
要領は竹馬にとても似ているのだが、私は運動神経が酷く鈍かった。
困ったな、これでは歩けないじゃないか。職業柄引き篭もり気味な私でも、これはやはり不便である。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:28:56.30 ID:3CU6Z4AS0
  --だが、まあ、どうということはない--

 思考が終わる。結果は別に問題はないということだった。
飯は家政婦が運んでくるし、仕事はPCの前から動かない。
睡眠は机に突っ伏せばいいし、便は垂れ流せばいい。家政婦が掃除するであろう。

 私は動く必要はないのだ。
ただPCの前に座ってエンターキーと左クリックで富を生めばいい。
安ければ買う。高くなれば売る。この株には私の意志は「売る買う」だけで価格には私は関係ないのだ。

 関係の無い場所から、一番うまみを得る。
誰から恨まれることもない最上の結果である。

 両手両足の機能をほとんど失ったとはいえ、何も困ることは無い。


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:42:10.55 ID:3CU6Z4AS0
 --ぶれっくふぁすと--

 PC前に戻ると、私は椅子に座りノートパソコンをのけて机に突っ伏した。
忙しすぎて寝る暇がなく、やがて仕事中に寝てしまう。若い頃にはよくあったものだ。
過ぎ去ってしまった若い頃を思い出し、私は眠りに落ちていった。

 家政婦には私が寝ていても起こさないよう言いつけてある。
私が寝ていても規定時刻に飯を運んでくるよう、机の上に置いていくよう言いつけてある。

 私が目を覚ますと目の前にサンドウィッチとバナナが置かれていた。
その皿の隣にはマグカップがあり、湯気が立っている。コーヒーだ。
いつものメニューである。時刻は午前十時。いつもの時間である。四肢の指の問題なんて関係がない。

 腹が減っていたので視認するやいなや手を伸ばした。
親指でも掴めたので問題はなかった。むしろ昨日よりも安定感がある、力の方向が凝縮されているからであろうか。
かぶりつく。歯で挟むとじゅわあと肉汁が口内に広がった。続いてカリッと音がした。衣を噛んだのだ。さくさくである。

 パンのさらさらとした表面。衣のざらざらとした表面。生暖かい温度をいつもよりもはるかに知覚できた。
咀嚼しているうちも同じであった。ぐちゃぐちゃになったそれらをいつもよりもはるかに知覚できている。
そして、舌がなぜか思うように動かない。特に上方向に働かないのだ。味もいつもより感じられない。

 ただ、食物の状態だけがとてもはっきりと理解できた。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:54:49.88 ID:3CU6Z4AS0
 サンドウィッチに視線を落とした。トーストに挟まれているのは衣に挟まれた肉である。
具はいつもか(変・代・替・換)えるように家政婦に言いつけている。見たところこれはカツサンドである。
だがしかしあの濃厚なソースの味はしない。どころか、油でぎとぎとと気持ちの悪い感覚だけが口内にある。

( ^ω^)ううん?

 疑問に首をかしげながらもカツサンドを皿に置いてマグカップを掴んだ。
手首で挟もうとするときっと熱くて落としてしまうだろう。それを見越している私は取っ手を握る。
大丈夫だ。それぐらいの握力と範囲はある。

 私は猫舌ではないのでずずず、と啜るようにコーヒーを飲んだ。
だが砂糖もミルクも入っていない苦味はいつまでたっても広がらない。
おかしいぞと思いもう一度。同じである。それどころか、口の中が酷く熱い。

 火傷をしたとわかるヒリヒリとした感覚がした。
カツサンドを口に運ぶと擦れて痛みが走る。舌だけではない。歯全てがである。
前歯や奥歯とかいう括りはなく、ただ歯と舌の全てが痛い。そして食物の味はしない。

 バナナを口に運んでも甘さは広がらず、最後の一滴までコーヒーを飲んでも味はしない。
朝食を終えた私は満腹感を得たが、口に広がる不快感をも得ていた。これほどにまで不愉快なのは初めてだった。
どこになんの食べかすがこびりついているか、どの歯にどんな状態の食べかすがこびりついているか、全て判別できるのだ。

 爪楊枝を引き出しから取り出して、食べかすをとろうと歯の隙間に差し込んだ。
すると激痛が走った。慌てて爪楊枝を取り出すと先端に血がついている。痺れる痛みと鉄の味が口内に広がった。

( ^ω^)もしや

 口にするまでも無い、私の舌と全ての歯は親指になってしまっていた。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:57:52.50 ID:Zz+9qpsh0
もしや


じゃねーよwwwwwwwww

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/17(土) 23:59:44.62 ID:+NkZbF1lO
想像するとじわじわくる…

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 00:00:20.58 ID:546viwNy0
かなりホラーだぞその状況…



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 00:07:42.71 ID:MVMjCJ6r0
 --らんち--

 私は朝食の時間は遅いが昼食は正午である。
そのため、二時間と間は開いていないのだ。

 朝食から昼食までの間、私はいつも寝るかネットサーフィンをして過ごしていた。
そして今日も例に漏れずネットサーフィンをしている最中に昼食が運ばれてきた。
家政婦が「失礼します」と朝食を下げて、昼食を置いていく。

 お盆の上に置かれている品は丼とお吸い物と惣菜であった。緑茶と急須も一緒に置かれていた。
家政婦が退室すると私は丼とお吸い物の蓋を開けた。湯気が立ち上る。
今日は親子丼と豚汁か、好物であったが、口内が親指で埋め尽くされているためあまり気が進まなかった。

 残してしまおうかとも思ったが、幼い頃から食の大切さを学んでいるためそれは許されなかった。
ここで残してしまうと、富豪である私を形作った過去の私を否定することになる。それに好物なのだ。親指だろうと関係ない。

 匂いを堪能しようとするとなぜか咳き込んでしまった。
同時にまたもや口内から不快さがあふれている。どうやら唾がたっぷりと付着してしまったようだった。

 だが、それは咳き込んでしまって生じた不快感であって、咳き込んだ理由ではない。
はたしてなんだろうかと思う前に息苦しいことに気がついた。そして大好きな親子丼の匂いがしない。
あの卵と鶏肉の匂いがしないのだ。卵はいい半熟具合なのに、どういうことだろうか。

( ^ω^)もしや

 なんだか慣れてきている自分がいた。
鼻が親指になってしまったのだな。やれやれ。私は箸を掴んで親子丼に手をつけた。


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 00:22:34.54 ID:MVMjCJ6r0
 --口内大戦争--

 口の中がたとえようもなく気持ち悪い。酸味こそないももの嘔吐物が在住しているかのようだ。
噛み合わせも親指同士のため互いの爪と肉の間に互いの爪が突き刺さり激痛が走るのだ。勿論出血もする。
そしてそれら全てを舌で掃除できないことも腹立たしい。食とはここまで汚いものだったか。

 爪がお互い削りあい上の親指も下の親指も爪の形が酷く悪くなっていた。
食べかすに混じって爪のかすも混じっていて親指になった舌を動かすたびに痛む。
唾を吐き出そうにも口の中がうまく動かず、口の端からだらりと垂れた。唾の色は赤色であった。

 緑茶を口に含み、ぐちゅぐちゅと口をゆすぐ。
そして横に吐き出した。ペルシャ絨毯にはやはり緑色の嘔吐物が広がった。
全部の食べかすがとれたわけではなく、もう一度口に緑茶を含んだ。ゆすぐ。

 ここで一つ発見がある。緑茶は冷めてきていたためぬるくなっていた。
ぬるま湯に浸かると人間はリラックスするという。気持ち良いし当然であろう。私も例に漏れない。
口内が全て親指である私にはゆすぐという行為がとても気持ちのよいことだったのだ。

 急須の中に緑茶がなくなると私は肩を落とした。本当に残念だった。
これほどまでに残念に思ったことが最近あっただろうか。豊かな生活は感性を鈍らせるものかもしれない。

 満腹感と満足感からか眠気が私を襲った。
睡魔に逆らう理由もなく、お盆とPCを目の前からのけて机に突っ伏した。


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 00:37:26.42 ID:MVMjCJ6r0
 私には歯軋りの癖がある。
そう知ったのは今であった。あまりの痛みに飛び起きたのだ。
もう口にはあまり味覚が残っていなかったが、触覚が鋭敏なためどろりとした感覚から血だと簡単に判断できた。

 口の端から垂れ流すとやはり赤色である。床に落ちる。
唾と混じりあってあわ立っていた。右手を口に突っ込んでみると口の中の親指は酷く歪な形をしていた。
爪、指とともに自分の四肢に生えている親指だとは思えない。何本かの親指が潰れて骨が露出していた。

 覚醒してからずっとある粉っぽい感じはもしや骨の粉末だろうか。
骨までも親指となっているのならば歯と違ってそこまで堅くないのも頷ける。

 ゆすぐ液体が欲しかったが何も無かったので思わず頭を抱えた。
不快感で堪らなかったので家政婦を呼びたかったのだが、家政婦を呼ぶベルは壁際である。
歩けない私は椅子に乗ったまま移動するしかないと考えたが、その場合体重移動だけで進まねばならない。

 さすがにそれはとても疲れるだろう。
だがこのままあらゆるものが血で浮かんでいる情勢に甘んじるのも気が滅入る。
時計に目を向けると十三時前であった。十五時に間食を家政婦が持ってくる手筈になっているので我慢することにした。

 ふう、と後頭部に手を伸ばすと堅い感触がしたので思わず手を引っ込めた。
壁際まで這いずったときのことを思い出し、そちらに視線を向けると何も無かった。
これはもしや気のせいではないのかと気を取り直して後頭部に手をやると、期待を裏切りやはり親指に親指が触った。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 00:50:40.39 ID:MVMjCJ6r0
 --家政婦がくるまでに--

 これには困った。二時間後には家政婦が来るのだ。
私は今、四肢、口内、髪の毛が親指になっているのだ。こんな姿を見せると錯乱してしまうかもしれない。
四肢と口内は気をつければ大丈夫だ。問題は髪の毛である。なんとかしなければならない。

 私は考え込んだ。
どうしようか。今は夏であり何も被るものはない。
帽子があるじゃないかと思ったが、私は帽子を被ることはなかった。

 思考すること一時間と十五分。
PCの検索履歴は「被るもの」「頭 隠すもの」などの関連用語で一杯になった頃だ。
そのとき私に電流走る。ナイトキャップがあるはずだと私は閃いた。最近は着用していなかったが二週間ほど前は被っていたのだ。

 どこに置いたかなどわかるわけがない。
天蓋のついたベッドへと視線を向ける。やはり見つからない。ああ! 頭を抱える。
勢いよく抱えたため親指が数本変に曲がってしまい痛みに襲われた。時計を見る。十四時二十二分。

(;^ω^)ええい

 私は始めて汗を流した。セミコロンが頬を伝う。
焦れば焦るほど汗の量と時間の経過速度が増加する。ああもう十四時五十八分だ。

(;^ω^)ええい

 慌てて室内に視線を走らせる。
これで見つからなければ家政婦の一人に発狂してもらうしかない。

 まったく考えもせずに引き出しを開けると、そこにはナイトキャップが入っていた。
こんなところに! と驚嘆する間も惜しい。五十九分。扉が開く。被る。家政婦が見える。大丈夫。被り終えた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 01:05:44.13 ID:77h0qDbG0
後頭部って何が親指になったのかと思えば、髪ときたかww

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 01:12:29.71 ID:MVMjCJ6r0
 --日没--

 間食も夕食も終えて仕事に入る。常にナイトキャップを被っていれば何の問題もない。
ナイトキャップすらも家政婦に気を遣わなければ被らないのだが、やはり上に立つものたるもの他人への配慮はしなければならない。
常に液体を携帯することにしたので私はもう不快感に襲われ続けることはなくなっていた。そのためか穏やかである。

 やがて、夜になった。私の仕事でもっとも稼ぎ時である時間である。
素早く(大分親指での動作にも慣れてきた)PCでページを開き、折れ線グラフで埋め尽くされたページへと飛ぶ。

 そして数時間後。やはり私は一夜で巨万の富を得ていた。何も問題はないのだ。
人物の外見など、その人物の能力には何も関係がない。
できる人物はどんな外見でも、どんなに劣等なハンディを背負っていても結果を残すのだ。

 もし、たら、ればを唱える人物を私は酷く軽蔑している。
そいつはきっとどんな外見でも、どんな能力でも、どんなにアドバンテージを得ていてもぶつぶつとぼやき続けるのだろう。
暗澹とした庶民・大部分の一般人と私が違うのはやはりその点につきるのだ。

 仕事も終えたことだし、伴侶の居ない私はアダルトサイトにウェブページを繋げた。
早くも私は興奮している。呼吸がねばねばしくなり口内の親指が湿ってきていた。

 我慢できなくなり、私はズボンを下ろしてパンツを脱ぎ捨てた。後から拾いに行くことなんて考えない。
荒げた息で自分の股間に手を伸ばした。全てが親指なのだ、きっといつもとは違う快感が得られるだろう。

 私は一物を掴んで一心不乱に擦り続ける。乱れた息で画面の中で乱れる黒髪の乙女を見て力強く擦り続ける。
いつもならば私は二分と持たずに射精していた。だが、すでに十五分が経過していた。

 おかしいな、と思い視線を股間に向けた。声を上げなかったのはどこか納得できていたからであろうか。

( ^ω^)股間が、親指になっている
                              ――了――


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 01:23:11.11 ID:MVMjCJ6r0
これにて( ^ω^)指が全て親指になってしまったようですは終わりです。

新しいIDが丁度折れ線グラフのようで素晴らしいですね。
親指があまり想像できないという方が居れば、絵にしていただければよくわかると思います。
長くながら投下に付き合って頂き、みなさんどうもありがとうございました。親指をたまには眺めてあげてくださいね



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 01:34:24.07 ID:MVMjCJ6r0
あ、忘れてた。猟奇祭り参加作品です。

36 名前: ◆2l3sh2IVwE :2010/07/18(日) 01:39:12.85 ID:MVMjCJ6r0


37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/18(日) 01:56:04.71 ID:aucprOcY0
親指か…

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