スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

( ・∀・)まだまだなようです

79 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:34:17.13 ID:4HOD6yGQ0
( ・∀・)まだまだなようです



日はとうの昔に沈み、あたりは既に闇に包まれていた。
表通りからすこし奥に入ったその道には、灯りはほとんど無いに等しい。
廃れた訳のわからないスナックや飲食店、或いは住宅の窓から灯りがこぼれているが、
残念ながらそれらは彼の足もとまでは照らしてくれなかった。

( ・∀・)「畜生、なんだってんだよこの野郎……」

よれたグレーのスーツを着た、
中年にみえる男は、ゆっくりとつぶやいた。

多少白髪があるように見えるが、髪は整髪剤まとめているらしく、綺麗に整っていた。
それ故か、昼間働いている姿が容易に想像できる。




81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/02/19(金) 21:35:21.20 ID:4HOD6yGQ0
( ・∀・)「冴えない街だねぇ……」


別にこの道をいつも通っているわけでは無い。
ただなんとなく、今日は夜の街を闊歩してみたかったのだ。
帰りを待つ家族には、既に帰りが遅くなる旨をメールで伝えておいた。


だが悲しいかな、ここは残念ながら田舎であり、繁華街と呼べるほどのものは存在していなかった。
せいぜい駅前に飲み屋が何件か集まり、営業しているのかどうかさえよくわからないような、
スナックやバーが点在しているくらいだった。



84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:40:33.20 ID:4HOD6yGQ0
何故この道を歩いているのか、本人にもよくわかってはいなかったが、気がつけばここにいた。

ふと前方に暖かい灯りが見えたので、何の店かと目を凝らし近づいてみる。


( ・∀・)「……バーボンハウス?
      本当にやってんのかよ?」


これといって用事も無かった彼は、この店に入ることにしてみた。
理由など本当に無かった。この店も、周囲にある訳のわからない飲み屋の仲間に見える。
だがしかし、この時の彼を惹きつけたのは事実だった。


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:42:23.20 ID:4HOD6yGQ0
ドアを開けて、店の中へ入る。同時に来客を知らせる鐘の音が鳴った。
店内に客の姿はなく、暖色系の間接照明に照らされた店内はなんとも暖かい雰囲気につつまれている。
調度品もアンティーク系のもので揃えられており、悪くない店構えだった。

カウンター席に着くと、奥から店主と思われる男があらわれた。

(´・ω・`)「いらっしゃいませ、バーボンハウスへようこそ」




87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:43:56.34 ID:4HOD6yGQ0
店主が、一杯のテキーラを差し出す。

(´・ω・`)「このテキーラは初めてのお客さんにサービスしてるんですよ。
      よろしければどうぞ」

( ・∀・)「テキーラなんて久しぶりだね……、ありがたく貰うよ。
      最近、会社の飲み会以外では家でしか呑まなくなってね」

久々に呑む酒の味に、彼は自分の若いころの記憶を重ねていた。
そのころは都会で働き、仕事帰りにバーでよく酒を飲んだものだった。

しかしこの街に戻ってからは、酒を飲むのは家か年に数度の会社の飲み会くらいだった。


88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:44:54.74 ID:4HOD6yGQ0
(´・ω・`)「そういう方も多いと思いますよ。最近は飲み屋街も廃れてきましたからね」

( ・∀・)「そうなのかい?この街に戻ってきたのも最近だからね……」

(´・ω・`)「……地元はここだけど、若いころはもっと都会の方で働いていた、といった所ですか?」

( ・∀・)「ん、そんな所かな、少し前にこの街に戻ってきてね……
      いや、気がつけば10年前の話だ。
      気がつけばこの街に来てもうかなりたつなぁ……」





90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:45:49.36 ID:4HOD6yGQ0
そう言われてみれば、もう10年も前の事だった。

実家に一番近い支社――それでも特急で一時間はかかるが――に行かせてくれと何度も頼みこんだが、
自分の要望を会社は聞き入れてはくれなかった。

皮肉にも、自分の能力を買われての事だった。
若いころから一生懸命に身を粉にして働いた、その結果が仇になった。

しびれを切らし、退社してこの街の会社に就職したのはもう10年も前の事だった。



91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:46:53.08 ID:4HOD6yGQ0
(´・ω・`)「……ご注文はどうなさいましょうか?」

ふと、マスターの声が思考を遮った。
そうだ、注文をしなければいけない。

( ・∀・)「今と同じの、貰えるかな?」

(´・ω・`)「かしこまりました。」



92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:47:53.35 ID:4HOD6yGQ0
そういうと、店主は酒を作りながら話しかけてきた。

(´・ω・`)「お悩みがあればお聴きしましょうか?
      このお店にいらっしゃるお客さんは不思議とね、
      何かお悩みを抱えた表情をしてらっしゃるんですよ」

( ・∀・)「本当かい?悩んでそうに見えた?」

あまり意識しないようにしていたつもりではあったが、どうやら表情に出ていたらしい。
いや、バーのマスターなのだからそのあたりは百戦錬磨なのかもしれない、とも思った。

(´・ω・`)「まぁ、無闇に詮索しようって訳ではありませんがね。
      バーを長くやってると、いろいろとできるようになるものなんですよ」




94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:51:06.22 ID:4HOD6yGQ0
( ・∀・)「店を始めてどれくらいになるんだい?」

(´・ω・`)「もうかれこれ30年になります。あちこちに年季が入ってきましてね」

( ・∀・)「それは外見とかかな?」

そう言うと、彼は苦笑いを浮かべながら、2杯めのテキーラを差し出した。
さっそく、できた酒を口にする。
やはり甦るのは、若かりし頃の記憶だった。


95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:51:47.44 ID:4HOD6yGQ0
( ・∀・)「会社の経営が思わしくないようでね」

(´・ω・`)「ええ……」

( ・∀・)「昔は同じ業種の大手に勤めていてね、エースなんて言われたもんだった。
      それが今じゃ倒産寸前の弱小企業で唯一業績を上げれる奴、なんて言われようだ。
      安月給で働きまくってね。本当に報われないよ。
      僕には妻も子供もある。年老いた両親だっている。
      僕に能力が無いわけじゃないと思うんだ。
      でももう50にもなって、あと何十年も働けるわけじゃない。
      もう八方塞がりというか、訳が分からなくなってね……」


何をべらべらと喋っているのだろうかと思った。
初対面のバーの店主に自分の悩みを打ち明けるなんて。
しかし、彼のもつ雰囲気――或いは店の雰囲気だろうか――が、それを感じさせなかった。


96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:54:21.99 ID:4HOD6yGQ0
(´・ω・`)「僕と同じ年代じゃないですか。
      もう少しお若く見えましたがね……」

( ・∀・)「若く見えるのは嬉しいけどね……」

少し間を置いて、店主が語りだす。

(´・ω・`)「能力が適正に評価される、というのはなかなか難しい事です。
      環境やタイミング、運の要素だってあるでしょうから」


(´・ω・`)「ただ……、あなたが悩んでいるのはもっと深く、本質的なことのように思われますがね」



98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:55:58.00 ID:4HOD6yGQ0
初対面の、バーのマスター風情が面白い事を言うものだ、と思った。
普通なら怒ってしまいそうな言葉を平気で投げかけてきた。

( ・∀・)「……聞かせてよ、その”本質”ってやつをさ。」

非常に面白かった。彼の話に興味がわいた。

(´・ω・`)「仕事に悩み、過去に想いを馳せる人は、基本的に同じことに悩んでいるんですよ。」



99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:57:49.19 ID:4HOD6yGQ0
(´・ω・`)「……仕事に対する情熱を失ってしまった、のではないですか」

( ・∀・)「……」

再び酒に口をつけると、男の言葉がより一層身に染みた。
思ってもみなかったが、確かにその通りだった。

(´・ω・`)「若さがそうさせるのかもしれませんがね、
      自分に合った仕事であれば、はじめのうちは多くの人が一生懸命に取り組むものです」

(´・ω・`)「年齢とともにね、衰えていくらしいんですよ、それは。
      ……かく言う僕もそうなんですけどね。」



100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:59:12.12 ID:4HOD6yGQ0
確かにその通りかも知れない。
若いころは深く考えずに仕事に取り組み、やりがいを感じていた。
能力が評価されるのが嬉しく、誇らしかった。

それが最近では、仕事にあまり身に入らず、考え事をすることも多かった。

どうせ、もう倒産寸前だ。
どうせ、もう何年かしか働けない。
どうせ、もう人生は折り返し地点。

こんな思考が渦を巻いて行くだけだった。


( ・∀・)「……それで、どうやって情熱を取り戻した訳?」

(´・ω・`)「いいえ、取り戻してはいませんよ。
      御覧の通り、あなたの他にお客もありませんし。」


101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:00:55.51 ID:4HOD6yGQ0
( ・∀・)「じゃあ……」

言葉を遮るように、店主は言った。

(´・ω・`)「少し前向きになっただけですよ。」

( ・∀・)「前向きに、ねぇ……」

確かに最近は後ろ向きだったかもしれない。
前向きになるだけでも少しはマシかも知れない。

そう思って、店主が言葉を紡ぐのを待った。


(´・ω・`)「とっておきの魔法をお教えしましょうか」




103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:02:18.44 ID:4HOD6yGQ0
馬鹿馬鹿しいと言われればそれまでですがね、と店主は付け加えた。

( ・∀・)「聞かせてよ、その魔法」

普段なら絶対に馬鹿にして聞きはしないだろうが、この男の言葉なら聞いてみようと思った。



104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:03:34.49 ID:4HOD6yGQ0
勿体ぶるように、店主は言った。


(´・ω・`)「……”もう”をね、”まだ”に換えるんですよ」
  

一瞬の静寂が、訪れた。


105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:04:36.25 ID:4HOD6yGQ0
そしてすぐに、店内には笑い声が響いた。

( ・∀・)「ははっ、はははは。
      そいつは良いや。あんたが考えたの、それ?」

(´・ω・`)「ある人の受け売りですよ。
      ただ、思いのほか素晴らしいでしょう?
      そして理解して頂けるあなたも素晴らしい、と私は思いますよ。」

その時、男のポケットからバイブレータの音が鳴った。
妻からのメールだった。

『ご飯、まだ暖かいですから、早くお帰りになって下さいね』


106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:07:40.66 ID:4HOD6yGQ0
( ・∀・)(”まだ”暖かい、か……)

男は席を立ち、店主に告げた。

( ・∀・)「すまない、どうやら帰らなければならないみたいだ。」

(´・ω・`)「いえいえ、お越しいただいただけでありがたいですよ」

( ・∀・)「はいよ、お会計」

(´・ω・`)「確かに。またのお越しをお待ちしております。」




108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:08:58.80 ID:4HOD6yGQ0
席を立ちドアを開けると、鐘の音とともに少し肌寒い空気が頬をなでた。


( ・∀・)「”もう”を”まだ”にね……」

彼の足取りは、幾分か軽かった。



109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:09:52.22 ID:4HOD6yGQ0
”まだ”何年かは働ける。
”まだ”会社は倒産していない。
”まだ”僕を必要としてくれている会社が、人がいる。

―”まだ”僕の人生は折り返し地点―



110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:10:43.66 ID:4HOD6yGQ0
こんな世の中でも捨てたものじゃないな、思えてきた。
文字通り、それは魔法の言葉だった。

彼が行く道は薄暗かったが、
彼の心は、バーボンハウスの灯りに照らされていた。

また今度時間があるときにでも、あの店主と語らってみようかなどと考えて、
彼は家路を急いだ。

来た道を戻っているだけのはずだが、彼が見る世界はほんの少しだけいきいきとしていた。


( ・∀・)まだまだなようです(´・ω・`)  終わり



80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 21:34:52.89 ID:eHT6avRH0
Q.叩かれるのが怖いよ…(-_-)
A.川 ゚ -゚)  卑下、自虐、謙遜は叩かれる元だ。 堂々と投下すればいい。

あと総合でコテは厳禁


112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/19(金) 22:14:47.13 ID:4HOD6yGQ0
以上、私の処女作でした。
読み終わった後に、心が少しだけ暖かくなるような話を書きたいな、と思って書いたのですが…

思ったよりも前半が暗い感じなってしまいました。

初心者の私に励ましと指導をしてくれた>>80さん、
支援をくれたみなさん、本当にありがとうございました。

もしよろしければ、感想をお聞きしたいです。
よろしくお願いします。

コメントの投稿

非公開コメント

まだだめぽ

文章がうまい
いい話だった
プロフィール

短い( ^ω^)

Author:短い( ^ω^)
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
カウンター
フリーエリア
ツイッター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。