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無題


439 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:26:27 ID:jRvmtkIc0 [4/13]
この所、日が沈むのが早くなった。
太陽は厚い雨雲に閉ざされ、四時だと言うのに光を覗かせない。
まるで夜であるかの様に静まり返っていて、昨夜から降り続いてる雨音だけが生き長らえている。

それと比例するように店内も静かである。古い蓄音機から流れる、名の知らない歌手の歌う、名の知らない曲(失礼だとは思う)が淡々と流れているばかりである。

lw´‐ _‐ノv「雨、止まないな」

目の前の彼女が口を開いた。
目の前のコーヒーカップに移る自分を見ているのだろうか。視線を僕に向けることなく、続ける。

lw´‐ _‐ノv「君は、雨が好きかい?」

薄目ではあるが、俯いていても分かるくらいに上に伸びた睫毛。湿気で少しうねってはいるが、良く手入されている亜麻色の髪。
正直言って、彼女は美人だ。
コーヒーの匂いに紛れて、申し訳程度につけている彼女の香水の甘い匂いが鼻をくすぐった。

( ^ω^)「いや、別に……」

そう、一言だけ答えた。
少し素っ気なかっただろうか。途端に不安になる。


440 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:27:20 ID:jRvmtkIc0 [5/13]
lw´‐ _‐ノv「そうか」

( ^ω^)「シューは雨が好きなのかお?」

不安になったので、返してみた。少し会話が弾むように。
我ながら小心者である。

lw´‐ _‐ノv「……時に、ブーン」

彼女が口にしたのは、それに対する答えでは無かった。
どうも、彼女は話を違う方向にシフトしたいらしい。

( ^ω^)「なんだお?」

僕はその無理やりとも言える流れに乗ることにした。
何て事は無い、雨の日の夕暮(真っ暗ではあるが)。ゆっくりと時間を噛みしめるのも悪くは無いだろう。

lw´‐ _‐ノv「一つ一つ音を立てて散っていく雨粒。君は、何を感じる?」

困った。特に何も感じたことが無い。

441 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:28:51 ID:jRvmtkIc0 [6/13]
( ^ω^)「特に何も……。シューは何か感じるのかお?」

質問を返した。本当に感じた事が無いのだから、仕様がない。

lw´‐ _‐ノv「宇宙を感じる」

( ^ω^)「宇宙……?」

彼女の口から出たのは、想像を遥かに上回るスケールの単語だった。
驚くのも当然であると言える。

lw´‐ _‐ノv「そうだ。地面に叩きつけられる雨粒一つ一つに、どうしようもない宇宙を感じる」

僕は彼女の話を聞きながら、コーヒーを口に含んだ。
ここのコーヒーは若干酸っぱい。それが気に入っている。

それに構うことなく、彼女はもう一度口を開いた。

lw´‐ _‐ノv「コスモゾーンだ」

( ^ω^)「……コスモゾーン?」

これもまた、当然の反応だろう。

442 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:30:55 ID:jRvmtkIc0 [7/13]
lw´‐ _‐ノv「コスモゾーン。すなわち宇宙生命。聞いたことが無いかな」

心当たりは無い。
宇宙生命とは何なのか。宇宙人の類なのだろうか。
もう一度コーヒーを口に含み、それを訪ねてみると彼女は小さく首を横に振った。

lw´‐ _‐ノv「コスモゾーンは宇宙が生む全てだ。私も、お前もコスモゾーンなんだよ」

どうやら僕はコスモゾーンらしい。

lw´‐ _‐ノv「そして、コスモゾーンから生まれる命もまた、コスモゾーンなんだ」

( ^ω^)「赤ちゃんかお?」

lw´‐ _‐ノv「それもある」

そう言ってシューは目の前のコーヒーカップにミルクを入れた。
真っ黒な中に、輝くような白がふわっと滲み、美しいマーブルを作り出している。
僕は、そのマーブルが好きだ。

lw´‐ _‐ノv「他に私たちが生み出すもの。分かるかな」

( ^ω^)「なんだろう……」

lw´‐ _‐ノv「感情だよ」

シューはコーヒーを口に含んだ。
血色のいい唇が、ほんの少しだけキュッと閉まる。

443 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:33:16 ID:jRvmtkIc0 [8/13]
lw´‐ _‐ノv「怒り、悲しみ、喜び……。それらもまた、コスモゾーンだ」

感情は生きていると言いたいのだろう。
なるほど。それについては理解が出来る。
生きていなければ感情は生まれないし、また感情が生きているからこそ、それに突き動かされるからだ。

しかし、そこで一つの疑問が浮かぶ。

( ^ω^)「で、それが雨と何の関係があるんだお?」

的外れなことは言ってないと思う。
いや、僕の理解力が無いだけなのか。

lw´‐ _‐ノv「ここは国の中心。多くに人が行き交って、感情を生んで行く」

( ^ω^)「まあ、そうだおね」

lw´‐ _‐ノv「そうして生み落とされた感情は何処へ行くんだ?」

聞かれても困る。
僕は想像力に自信は無い。考える気力すら起きない。

( ^ω^)「さあ……。分からないお」

lw´‐ _‐ノv「簡単さ。その場に留まるのさ」

444 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:34:07 ID:jRvmtkIc0 [9/13]
その場に留まる。
文字通り、産み落とすと言う事なのだろうか。

( ^ω^)「でも、それを引きずったり、いつまでも根に持つ事だってあるお」

これについてはその通りだろう。

lw´‐ _‐ノv「ずっと同じ感情を持ち続けてる訳では無い。ふとした瞬間に捨て、また思い出したように似た感情を生み出すんだよ」

同じ感情はあり得ないと言う事だろうか。
確かに、その通りかもしれない。
同じ事柄でも、思うたびに細かな違いは出てくる。その情景、気分。同じ感情にさせない要素など、腐るほどあるというものだ。

どうやら、僕は考えが甘かったようだ。

( ^ω^)「なるほどお。なんとなく、言ってる事が分かるお」

lw´‐ _‐ノv「……街は捨てられた感情で一杯だな」

確かに。
彼女の言うとおりなら、街は捨てられた感情にあふれている。
それはもう、手におえないくらいに。

445 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:38:27 ID:jRvmtkIc0 [10/13]
( ^ω^)「本当だお。これは大変だお」

コーヒーに砂糖を入れる。
さらさらと言う小さな音が、蓄音機から流れる音楽に消されていった。

lw´‐ _‐ノv「そこで、雨だ」

( ^ω^)「お?」

ようやく疑問の答えが聞けそうだ。

lw´‐ _‐ノv「感情が溢れ返ったこの街を、雨が全て流してくれる。一つ一つ、自らの体を地にぶつけてな」

人の淀んだ部分も、綺麗な部分も皆流してしまう。と彼女は続けた。

( ^ω^)「確かに。雨音ってなんだか落ち着くと言うか、ボーッとさせると言うか……」

lw´‐ _‐ノv「そうだ。つまりそういう事だ」

僕は思わず納得してしまった。
それを察して気分が良くなったのか、彼女は残していたミルクをすべてコーヒーに入れた。

不思議なもので、こうやって自信満々に説明されてしまうとその様な気がしてくるのである。
確かに、普通に聞き流していれば、思わず小バカにしたくなってくるような内容かもしれない。
しかし、今の僕には雨音と同じくらい綺麗に心の中に浸透していった。
それも、街中にあふれかえる余計な感情に影響されなくなったお蔭だろうか。そうだとしたら、雨の恩恵だと言えよう。

446 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:39:15 ID:jRvmtkIc0 [11/13]
ただ、たった一つだけ疑問が残った。

( ^ω^)「で、何でこの話を?」

lw´‐ _‐ノv「……宇宙規模の浄化が目の前に存在するんだ。そう思えば気が楽になるだろう?」

果たして、何の話なのか。

( ^ω^)「一体何の事だお?」

lw´‐ _‐ノv「何のって……。気にしてるんだろう?」

( ^ω^)「おぉ……?」

本当に心当たりがないと、うまく言葉も出ない。
ただ、とぼけた声を上げる事しかできない僕は、さぞかしマヌケに見えるだろう。

lw´‐ _‐ノv「……お母さんの事だよ」

( ^ω^)「……あ」

lw´‐ _‐ノv「あ、は無いだろう。あ、は」

なるほど、合点が行った。

447 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:39:57 ID:jRvmtkIc0 [12/13]
最近、僕の母親が亡くなった。
とは言え、顔も知らなければ名前も知らない様な母親だ。
僕が物心つく前に僕の母親を止めて、違う子供の母親になったのだ。

母親が亡くなったことについては父から聞かされた。
当然ながら、全く何も感じなかった。本当に他人事であるかのような感覚だった。
先の話で言うならば、僕からコスモゾーンは生まれなかったのだ。

だから、悲しんでなどいないし、ましてや気にしてなどいるハズも無い。

( ^ω^)「うん。本当に全然気にしてないから」

今までの話は彼女なりに僕を励ましてくれたのだろう。
照れを隠したかのように分かりづらく、神秘的に。かなりの遠回しな表現で僕の感情を地に落とそうとしてくれたのだ。

lw´‐ _‐ノv「そうか……」

彼女はそう一言残すと、窓の外に視線を向けた。
街頭が濡れたアスファルトを反射させ、淀んだ都会の色を映し出している。

窓に映ったシューの口元が少し綻んでる様な気がした。

全く。可愛げの無い女だ。

448 名前:名も無きAAのようです[] 投稿日:2012/06/06(水) 03:40:46 ID:jRvmtkIc0 [13/13]
おしまい

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