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異説・とある男の物語のようです


420 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:29:09.77 ID:2iD0NjRr0
男は静かに呻いていた。
何故このような結果になってしまったのか。自問するが、答えは出ない。間違ったことをやったつもりはないからだ。
磔にされた体はすでに痛みも感じず、たとえ痛みを感じてものたうち回る事さえできない。
これが「死ぬほど」の痛み。鈍痛は静かに男を狂わせ、やがて殺していく。
そんな考えを表すように、灰色の雲が空を覆いつくし、死刑場には小雨が降っていた。

( A ) (――俺が死ぬにはうってつけの空だ)

さっきからつんと刺激臭がするのは、体が痛みに耐え切れず脱糞したのだろうか。それとも神経が壊れたのか。
ただそんなことはどうでもいい。今以降に存在する未来――つまるところ死――についてではなく、ココに至るまでの過程が重要だ。
だが、男は自分の半生を振り返ったところで、不意に笑いがこみ上げてきた。過程? 俺の? それはお笑いだ。

('A`) 「そうだ、俺自身は救い続けたのに、俺自身には救いなど存在しなかったのだ!」

そう吐き捨てると、男を打ちつけた兵士は静かにするように言った。そして意地悪な笑いを顔に張り付かせ、四肢の杭を力任せに揺り動かした。
眠っていたはずの痛覚が突然目覚め、精神そのものが肉体と乖離するかのような痛みが全身を駆け巡る。気が狂いそうだ。
やはり俺などに救いは訪れない。男は全てを諦めた。
兵士は杭を動かすのをやめない。自然と、男の口からうめき声がもれる。早く殺して欲しい、そう逃げ出したくなるほどの激痛。
雨は次第に強くなってくる。きっと、神は俺を侮蔑しているのだろう。
次第に気が遠くなる。そして、網膜に今までの全て――男の半生――が再生される。

( A ) (これが走馬灯か)

どこかで聞いた話だ。人は死ぬ直前、今までの生き様が目に甦ると。それが、これか。
誕生。逃亡。平和。衝撃。師事。勉強。行動。救済。裏切。弾劾。そして――死刑。
痛みが臨界点に達し、目の前が真っ暗になる。

大雨の中、男はうめき声を上げて死んだ。惨たらしく醜い死だった。
死刑場を見物しに来た人々は、男が死ぬのを見ると清々としたように去っていった。
遠くで雷の音が聞こえる中、そこにはただ――、一人の男の死があった。


421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:30:51.02 ID:2iD0NjRr0
男は大工とその妻の下に生まれた。また、男には何人かの兄弟がいた。
貧しい家庭であったが、愛と喧騒につつまれて育った男はすくすくと育っていった。
また、男は勤勉で、父親の家業を手伝いつつよく本を読んで過ごした。本に知らないことをたくさん教えてもらえた。
だが――折りしも、当事男の家族が住んでいた国は悪政の最中。乱心の国王は、青少年を全て虐殺しようと企てた。
男は、友人知人が殺されていくのを見つつ、命からがら逃げ出した。

('A`) (――なぜ人は殺しあうのだろうか)

大量虐殺の中でふと男は思った。多感な青年期における男の課題がこれであった。
本を読んでも、作者にその話題をものの見事に避けられた。父親に聞いても、彼は怪訝な顔をして考え込むだった。
彼はこの問題に対する答えを欲していた。渇きは収まるところを知らず、次第に大工仕事も浮つくものとなった。
そうして――ある日、男は運命を変える師匠と出会う。

二人は出会うべくして出会った。運命――まさにその呼び名がふさわしい。
師匠は、人を治す「医者」であった。彼は医学を独学で学び、そして実践し続けた。
お世辞にも名医とはいえなかったが、理知的な治療法のない世では絶大な効果があった。彼を慕う者は多くいた。
男もその一人だった。彼は男に

('A`) 「死んだ人をも生き返らせるような、圧倒的な医療を教えて欲しい」

と宣言した。彼は男に気圧された。あまりに乾いた目は、人を救う知識を求めていた。

(`・ω・´) 「よし、弟子にしよう――ただし、俺のいうことをすべて暗記しろ」

そうして、彼と男はひたすら医学を学び、行動した。人の死と救済を目の当たりにし、男は医師になることを決意した。

('A`) (――俺は、一人でも多く救ってやるよ)

男は固く決意した。
その決意が国をも揺るがす氾濫と混沌を生み出すとは、男はまだ知らない。

422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:32:38.30 ID:2iD0NjRr0
男は立派な医師となり、数人の部下を連れて国中の病人を診回った。寝る間も惜しんだ。三日食わず飲まずで診療を続けたことさえある。髭は伸び、髪は女のように長くなった。
その成果は目覚しいものであった。おし、精神病、唖でさえも治した。時に医療ミスをすることもあったが、噂は良い物のみが広まる。国中にその評価は広まった。

(# ;;- )「「彼らはまるで魔法のように、体の悪さを直して下さる」」(//‰ )

噂は風に乗って見る見るうちに広がり、さらに多くの人々が彼らの元を訪れた。
だが、この噂を快く思わないものたちもいた。俗に言う「お上」、つまりは政治家達である。
国政にかかわるものは、たとえそれが政治に関するものでなくとも――、強い勢力を嫌う。恐れる。嫌がる。憎む。潰そうとする。
そうして、彼らは標的となった。男は国の生贄となった。
その方法はひどく簡単なもので、男の弟子――つまりは医師を希望するものを一人、内通者として仕立て上げた。
内通者を作るのはひどく簡単――金、自由、名誉などの「アメ」、権力という「ムチ」。この二つは人を数日で作り変える力がある。
たやすく裏切り者となった男の弟子は、数枚の金貨と男の命を等価交換した。
男は、逮捕された時に始めて自分が国家を揺るがすほど――人を救ってしまったことに気付いた。
だが気づくのが遅過ぎた。男は裁判所までしょっ引かれ、
裁判所を見に来た観客達は、男に
     ペテン師
( #゚Д゚)「嘘つき」

などと罵った。この言葉に異を唱えようものなら、傍の警備員が鞭を振るい、失笑を浴びるのみであった。

('A`) (――俺は別に金ももらってないし、嘘もついていない。何なら金が欲しいくらいだ)

結局、男の応答を半ば無視して裁判は進み、驚くほど早く男への仕打ちが決まった。
罪状:国家反逆罪。判決:磔刑による死刑。

('A`) (――ここまでやられちゃあ、何もできないわな)

男は自分ひとりに偽の証言まで付ける国の過剰さに心底あきれながらも、自分の近くに死が訪れていることを実感した。
不思議と、男は落ち着いていた。
ただ、自分がまだ治療できなかった足の不自由な老人や始終暴れている子供を診てあげられなかったことが唯一の心残りであった。


426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:35:00.15 ID:2iD0NjRr0
男の死体は、岩室の中に埋葬された。
棺の中の男は、磔にされたのが嘘のように安らかな死顔をしていた。
だが数日後、男はその岩室から消えていた。
噂は広まる。真実の種が虚言の葉を付け、やがて種を残し拡散する。
  _
(  ∀ ) 「男は手を触れただけで盲人や唖者を治した」

(  ω ) 「憑物を落とした」

( д ) 「男が死んだ直後、雷が掲揚された国旗を引き裂いた」

(* ω *) 「死んだはずの男を見た」

<ヽ д > 「裏切った男の未来を予言した」

( _ ) 「海の上を歩いた」

( 、 トソン 「水を酒に替えた」

( _L ) 「木を枯らした」

………
……


やがて十二人の男の弟子達は男の生涯、訓示、行動をくまなく描いた書を記すこととなる。
男の名前はイエス・キリスト。
神のごとき治癒の腕を持ち、嘘つきと罵られて死に――やがて神の息子と称されることとなる一人の男。

――異説・とある男の物語のようです  おわり

427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/10(日) 18:38:59.03 ID:2iD0NjRr0
>>420,>>421,>>422,426
以上で投下終了
地の文つめ過ぎてすみません
一部の思想を持った方への侮蔑となることをお詫びします

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