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無題



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:19:12.81 ID:UqF+RsFu0
お茶漬けには永谷園。米は当然こしひかり。
こだわりとも言いづらいが、それが根付いた習慣だった。

('A`)「あー、お茶漬けうめぇな」

飯がうまいのは幸せである。
そんな共通認識を盾にして、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

('A`)「うまいっすよ。マジでうまいですよ」

飯はうまい。誰かと食う飯はもっとうまい。
そう熱弁して、俺に叩き込んでくれやがったバカは隣にはいない。

('A`)「このうまさが伝えらんねぇなんて残念だぜ」

言ってりゃ物事は実現するもんだ。
やり続けてりゃどうにかなるもんだ。
信じてりゃ願いだって叶うだろ。

どこの少年漫画だっつーの。

('A`)「……まじうめー」

誰かと食う。たったひとつの調味料を失っただけ。
最期の一口をかきこんで、ごちそうさまと手を合わせた。
随分と行儀がよくなっちまったもんだ。

('A`)「でも、もうちょっとだけ暑苦しさは必要かなー」

熱々の飯を作ろうとして爆発する大バカはもういない。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:19:59.80 ID:UqF+RsFu0
米が大好きな姉ちゃんがいるんだ、とはにかんでみせるその表情に見惚れたのを覚えてる。
へぇ。何? 銘柄にこだわったりすんの? 俺はそんな返答をしたはずだ。

ノパ⊿゚)「米は当然こしひかりだったなっ!」

その笑顔がまぶしくてまぶしくて。
確かに、ひかりと名前に入っているのはいいかもしれないと思った。

('A`)「じゃ、俺もその銘柄にしてみっかな」

ノハ*゚⊿゚)「ホントかぁ! シュー姉ちゃん喜ぶぞー!」

('A`)「姉ちゃんが喜ぶのって、お前がそんなに喜ぶことなのか?」

一人っ子な俺にはどうもその感覚が分からない。
付き合いが浅い俺はその仲の良さの度合いも知らなかった。

ノハ*゚⊿゚)「お前がシュー姉ちゃんを喜ばせることを言ってくれたのが嬉しいんだっ!」

ヒートは真っ直ぐすぎる視線をこちらに向けて、本当に嬉しそうに笑う。

('A`)「……暑苦しいやつ」

ノパ⊿゚)「それがあいでんててーだからな!」

高校二年。クラス替えからちょっと経って、新しい環境に馴染みはじめた頃。
友達になったばかり俺らの話題は、ヒートの変な姉ちゃん二人のことが中心だった。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:20:50.06 ID:UqF+RsFu0
ノハ;゚⊿゚)「クー姉がまたやらかしてさぁ!」

('A`)「お前の姉ちゃん達がなんかやらかすのはいつもじゃねぇか」

ヒート自身もやらかす輩に入るのだが、それはいつもギリギリのところで飲み込んでいる。
この前、うっかり口にしたらひどいぞぉなんて言われてぶっ飛ばされた。
ヒートは思い止まるための装置がついていないから、発言には気をつけなきゃいけない。

ノハ;゚⊿゚)「今回はやばいんだって! 飯作ろうとしたら、今度は家全体が爆発して!」

(;'A`)「作らせるなって言っただろ!」

前に聞いた時は厨房だけだったから、確実にパワーアップしてる。
ヒートの家は、チャレンジ精神が無駄すぎるくらいに旺盛な人種の集まりなのだ。
もちろん、ヒートも飯を爆発させる。三姉妹ともだから、遺伝子に組み込まれているのかもしれない。

('A`)「お前ら三姉妹は料理すんな。そのうち町内が吹っ飛びそうだ」

ノハ#゚⊿゚)「そんなことは! ない!」

(;'A`)「家吹っ飛ばした前科から目をそらすんじゃねぇ!」

ぎゃーぎゃーとわーわーと、休み時間を過ごしていく。
そんなふうに仲良くなった俺らが、飯を一緒に食うようになるまで時間もかからなかった。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:21:55.66 ID:UqF+RsFu0
ノパ⊿゚)「ドクオと食う飯はうまいなー」

('A`)「飯がうまいのは当たり前だろ」

ヒートは飯時だけ静かになる。
ご飯粒を飛ばさないよう、姉ちゃんからしつけられたそうだ。
できれば、平時にももう少し静かにしてもらいたいものだが。

ノハ*゚⊿゚)「ドクオが飯をうまいって言うからうまいんだ」

作れもしない癖して、ヒートは食うことには一生懸命だった。
普段、何も考えないバカは飯を食う時だけ大真面目に何かを語る。

ノパ⊿゚)「私は姉ちゃん達と食う飯が好きだ。それ以上にお前と食う飯が好きだ」

('A`)「……どうも」

ノパ⊿゚)「誰かと食う飯はうまいだろ。ドクオもそう思わないか?」

静かな口調には、いつも以上の熱があった。

('A`)「うん。お前と食う飯は、うまいよ」

だから、できるだけ素直な返事をした。

ノパー゚)「そっか。それなら嬉しい」

幸せそうに飯を食う表情は出会ったばかりの時に見惚れたそれより全然可愛かった。
これは飯時にしか見られないんだろうな――
そう直感したことと、それが悔しかったことは内緒だ。

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:22:47.43 ID:UqF+RsFu0
ノパ⊿゚)「ドクオってば料理うまいよな」

('A`)「男にゃ褒め言葉にもならねぇスキルだ」

ノパ⊿゚)「いやいや、すごいぞ。砂でさえもドクオが握ればおいしくなりそうだ」

('A`)「砂はどう調理しても砂だろ……」

俺の弁当は自分手作りだった。
俺の家族はカーチャン一人しかいなかったから、その負担を減らすために料理は俺担当だった。

ノパ⊿゚)「ドクオがお嫁さんに欲しいなー」

('A`)「ヒートみたいな旦那さんは貰いたくないなー」

人の弁当から容赦なくおかずを奪い取っていくなというに。
だのに、ヒートは鉄壁のディフェンスで自分の弁当をガードしているのだった。

('A`)「飯くれよ」

ノパ⊿゚)「やらん。これは私の血肉となるべきものだ」

きっぱりと拒絶して、これ見よがしに弁当を食べきった。

ノハ*゚⊿゚)「ほら、ドクオ!」

食べきった途端、大声で俺の名前を呼ぶ。
それに促されて二人でごちそうさま、と手を合わせた。
俺達の奇妙な習慣が完璧に出来上がった頃の話だった。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:24:05.59 ID:UqF+RsFu0
ノハ;゚⊿゚)「ど、どどどくっどっどくどくおぉおぉぉおぉおおぉお!!!!!!!!」

(;'A`)「いつにも増してうるせぇ!」

ほら、と飴を差し出して半ば無理矢理に黙らせる。
こいつのあしらい方もだいぶうまくなったもんだな、としみじみ思った。

ノハ;゚⊿゚)「わ、わたしな、わわわたしっ」

('A`)「もちつけ。食ってる最中にうるさくするんじゃありません」

どうやら相当慌ててるらしい。深呼吸させて、話をゆっくりと続けさせた。

('A`)「どうしたんだよ、そんなに慌てて」

ノハ;゚⊿゚)「私、引っ越すことになった!」

('A`)「…………、え?」

そりゃ慌てるわ。
今までの俺らの関係とか、これからの俺らの関係とか、どうなるんだろう。
ずっととは言わないけど、卒業まではこんな関係が続くもんだと思っていた。

今まで積み上げたものが、一気に崩れたみたいだ。
食べてるときは静かだと信じてたヒートがこんなにもうるさくて。
いつかに見惚れたあの笑顔も嘘みたいだった。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:25:10.53 ID:UqF+RsFu0
高校生の引っ越しなんてあっさりしたものだ。
お別れの挨拶をして、また会おうねなんてちっぽけな約束をしてそれだけ。

飯がうまいから幸せだと笑ってた日々は、遠い思い出に消えていく。
一握りの砂は、風に晒されて飛んで行ってしまうだけだ。
決して、うまい飯に変わったりはしない。

ヒートがいなくなっても、大して変わりなく俺は日常を送れていた。

('A`)「……うまかったけどね。さっきのお茶漬けは」

飯がまずいと言ったら負け。
別れたあの日に勝手な自分ルールを作ってみた。

('A`)「つーか、家で食う飯が一人なのは当たり前だよ」

あの三姉妹みたいに賑やかな日常は俺んちにはないもんだ。
普通に朝飯食って、登校するだけ。
学校での騒がしい昼飯が待ってないってだけで、こんなにも違うものなのかと実感した。

('A`)「晩飯はカーチャンと食おうかなー」

誰かと食っても、そいつと食う飯よりうまいものはないんだろう。

いつかまた、心から飯がうまいって思えるその日まで、
もしかしたら、俺が立ち直ってるかもしれない日まで、
誰かと食うからおいしいんだって調味料はとっておこう。

飯は、ちょっとくらいお預けされた方がうまいんだ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/08(金) 20:26:50.40 ID:UqF+RsFu0
おしまい

お題は「お茶漬け」「一握の砂」でした
投下とか久しぶりすぎていろいろ忘れるかもしれんがご容赦を

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