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('A`)一方通行タイムマシンのようです




710 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:34:57.92 ID:tk36IFDV0
鬱田ドクオは大学生である。
どういう大学生かというと、平均より少し体重が軽くて、平均より少し身長が低い大学生である。
ちなみに性別は男。ついでに言うと顔も平均よりちょっと悪い。

ドクオは陰鬱な気持ちを引きずりながら通学路を歩いていた。
天気予報を信じて持ってきた傘がアスファルトを擦る音が小気味よく響く。
気分にそぐわないその音を止める気にもなれず、ドクオはただ俯いて歩いた。

('A`)(…予想以上にしんどいな)

特に目的もなく、精確にはちょっとの期待を込めて携帯電話を開いてみた。
着信0。新着メール1。
内臓が5センチせり上がるような希望と不安と驚きが入り混じった感覚を飲み込み新着メールを開く。

『生きろ。死ぬな。女なんかお前が無駄にした精子より沢山いるお』

期待とは違う人物、友人の内藤ホライゾンからのメールだった。
やる気があるのかないのかわからないその文面に少しの苛立ちを覚えたが、同時に心にかかる重力が減ったことに気づく。
さすがは内藤だ。空気を読まないのではなく、空気を奪い去る男。
唇の端をやや持ち上げ、内藤への返信を打つ。
感謝の気持ちを辛辣な言葉に隠し、出来る限り普段通りを装った。
友人に弱った姿を見せたくない、ドクオなりの意地だった。


711 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:36:43.88 ID:tk36IFDV0
内藤への返信を済ませ、また同じように俯いたまま歩きだす。
よく思い出してみれば、落ち込まなくても自分は下を向いて歩いていた気がする。
なんだ、いつも取りじゃないか。
ドクオの心に少しだけ元気が生まれ始めた。
それがカラ元気であることはドクオ自身が重々承知している。
それでも今は、その程度の元気にもすがりたいのだ。

もうしばらくでキャンパスに着こうかというところで、一人の女とすれ違った。
通学中に他者とすれ違うのは当然。
何故かドクオはその女に意識を引っ張られた。
特に意識もせず、何となく女を目で追った。

川д川

ドクオの眼に映ったのは異様に髪の長い女だった。
前髪が顔を覆い口元くらいしかまともに見えない。
そして、恐らく眼が合った。
ヤバい、見た事あるけどヤバい。
テロリンテロリン♪
ドクオの脳内に、緊急地震警報が鳴り響いた。


713 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:38:25.17 ID:tk36IFDV0
川д川 …あの、鬱田君…だよね?

(;'A`) え?あ、うん。

女は井戸中貞子。ドクオと同じ学年の大学生だ。
ドクオとは顔見知り程度。偶に席が隣になったりもしたが、基本的に交流はない。
そんな井戸中がドクオを知っている。実に恐れ多い。というか、はずみでちょっと漏れていた。

川д川 日本語学概論のハロー先生、今日休みだから休講だって…

(;'A`) え?そうなの?

川д川 …うん。確か鬱田君、その次の日本語教育論も取ってたよね?それも休講だって。

(;'A`) s、そうなんだありがとう。ど、どうしよう。そしたら俺今日学校行く必要ないや。

川д川 そう…なんだ。

(;'A`) う、うん。

川д川 …じゃあ…ちょっと一緒に…お食事でも…どう?

(:'A`) ほえ?

川゚д川 …駄目?

(;'A`) (koeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!)

715 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:39:45.74 ID:tk36IFDV0
テロリンテロリン♪

ドクオの脳内に緊急地震速報が鳴り響く。
避難できるならしてしまいたい。
ドクオは貞子と共に近所のファミリーレストランに来ていた。
値段が安く味はそこそこ。大学生御用達の店でドクオも内藤や、いろんな知り合いと頻繁に利用する。
しかし、この時ばかりは店内の様子は違って見えた。
目の前で注文する品を考えているのは井戸中。あの井戸中。
もし講義の出席確認の際に教授が名前を呼ばなければ、きっと七不思議のひとつになっていたであろう女だ。
エセ紳士のドクオは決して井戸中を侮蔑したり嘲笑したりすることはなかったが、一応の恐怖はある。
それほどに井戸中貞子という女はミステリアスであり、ホラーなのだ。

ミスホラーが自分に親切に休講を知らせ、何故か食事に誘われた。
ドクオは今なら丑三つ時の墓場でコックリさんをやってのける自信があった。

川д川 …ごめんね…急に…誘ったりして…

('A`) いや、どうせ暇だったし、むしろ誘ってくれてありがとう(俺の馬鹿)

川д川 …本当?…よかった。なんか鬱田君…苦しそうな気配がしたから…

('A`) 気配?(やばい見える人だマジやばい)

川д川 …うん気配。…なんていうか…私…そういうの…分かるから…

('A`) (なんかふしぎと信じてしまえる)


718 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:41:52.80 ID:tk36IFDV0
川д川 …あ…違うの…こうゆうこと言うと…勘違いされちゃうんだけど…オーラが見えるとかじゃなくて…

川д川 …動作とか…表情とか…そういうので…何となく…

川д川 …鬱田君が…実は嫌がってることも…何となく…わかるし…

川д川 …ごめんなさい…オーラとか見えなくて…期待はずれで…

('A`) ……むしろごめん。嫌ってわけじゃないんだ。ちょっと突然誘われて戸惑ってるだけだから

川д川 …(これは…嘘じゃない…やっぱりいい人だ…)

川д川 …ごめんなさい…でも…ちゃんとお礼がしたくて…

('A`) お礼?

川д川 …前期の…テスト…シャーペン貸してくれてありがとうございます。

('A`) え?そんなこと?気にしなくても良かったのに

川д川 (私にとっては…凄いことだった…もう無理だって諦めた私に…そっとシャーペンを渡してくれた…)

川д川 …うれしかったから

川д川 …こんな見た目の私に…自分から貸してくれる人なんていなかったから…

('A`) ……。

722 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:42:59.94 ID:tk36IFDV0
('A`) 俺もさ。

川д川 …え?

('A`) 中高っていじめられてたんだ。キモイって言われて。

('A`) 本音を言えば、俺も井戸中さんめっちゃ怖い。正直さっきちびった。

('A`) ごめん。

川д川 (こんなにまっすぐ…言ってくれるんだ…悪意も無く…)

('A`) 内藤は知ってるよね?あの鏡餅に笑顔を落書きしたような奴。あいつが俺を助けてくれたんだ。

('A`) だからかな。当たり前に接してもらうだけで救いになるのはよく知ってるから。

('A`) そして、井戸中さんが意外と怖くないことに今気付いた。ビビってごめんなさい。

川*д川 …え…うん…ありがとう。

('A`) じゃあ、俺ドリアにする。井戸中さんは?

川д川 …あ…私…イチゴパフェで…

('A`) (意外とかわいいの頼むんだな)

723 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:44:40.39 ID:tk36IFDV0
……

川д川 …それで…どうして…そんなに…辛そうなのかな…って思って

川д川 …私でいいなら…なにか手伝えないかなって…

('A`) 大したことじゃないんだ。ちょっと嫌なことがあって。

川д川 ……違ってたらごめんなさい…彼女と…別れたの?

('A`) …そこまでわかっちゃうんだ

川д川 …ごめんなさい…なんだか…そんな気がして…最初は…内藤君と喧嘩したのかと思ったけど…違うみたいだったから…

('A`) …うん。昨日別れたんだ。それでちょっと。

川д川 …ごめんなさい…

('A`) …いいよ。それより。本当にすごい観察だよね。

川д川 …言われる前に…全部気づけば…あんまり傷つかなくて済むから…だから…

('A`) …ごめん…

川д川 …ごめんなさい…

725 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:46:11.68 ID:tk36IFDV0
井戸中貞子は不器用故に焦っていた。
目の前には恩人の鬱田ドクオが落ち込んでいる。むしろ会った時より落ち込んでいる。
何とか励ましたいと思って食事に誘ったのに、まったく役に立っていない。
人の考えていることが分かっても、それに応えられないのでは意味が無いのだ。
視線が泳ぐ。鬱田は窓の外を見ていた。
苦しさ、そして苦しんでいる自分に対する憤りのようなモノを感じているのだと分かる。
そこに貞子への申し訳なさが加わってしまっているようだ。
何とか…何か言わないと…

川д川 …どらえもん

('A`) え?

川д川 …どらえもんって、タイムマシンを持ってるよね…

川д川 …私…よく思うの…あの時ああしてればなって…

川д川 …今の記憶を持ったまま…過去に戻れば…タイムマシンがあれば…もっと上手く…友達を作れたんじゃないかって…

川д川 …でも…もしタイムマシンがあっても…私は…使えない…

川д川 …いいことだけの人生なんかない…やり直したら…頑張って乗り越えたよくないことを…もう一度乗り越えなきゃいけない…

川д川 …私には無理だと思う…上手くいっても…結局…辛い思いをするなら…いっそ…今を頑張る方がマシだから…

川д川 …鬱田くんは…どう…?

('A`) 俺は…

727 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:47:25.59 ID:tk36IFDV0
('A`) 俺は、あいつとやり直すチャンスがあるなら何度だってやり直したい。

川д川 (そういうと…思ってたよ…それが…君だもん…)

川д川 …そう思える人は…きっと…今からでも…やり直せるよ…過去になんか戻らなくても…未来を作れる人だよ…だから…

('A`) 井戸中さん…

川д川 …ごめんなさい…偉そうなこと言って…

川д川 …そんな簡単じゃないことは…分かってるの…でも…そこまで思える鬱田君なら…きっと…

('A`) …ありがとう。(ガタン)

川д川 …鬱田君?

('A`) ごめん、急用思い出したんだ。お金は置いていく、料理はよかったら食べちゃって。

川д川 …分かった。

('A`) それじゃあ。…井戸中さん。ありがとう。

川д川 …うん。

川д川 ……私…これで…良いんだよね…


729 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:49:04.33 ID:tk36IFDV0
井戸中貞子は鬱田と入れ替わりにやってきたドリアにスプーンを突き刺した。
鬱田は恩人である。貞子は彼を助けたかった。
テーブルの端には話題に一役買ったどらえもんがコックの姿で笑顔を見せている。
こいつがいなかったら、鬱田の背中を押すことはできなかったかもしれない。
こいつがいなかったら、こんな思いをせずに済んだかもしれない。
貞子は湯気の立つドリアを勢いよく口へ運んだ。

鬱田は馬鹿である。きっと、別れ話を切り出されて反対もせずそのまま受け入れたのだろう。
彼は相手の気持ちを優しくくみ取ってくれる人だから。
貞子と違い相手の望みを叶えて上げれる人だから。
だから、自分の気持ちなんか伝えないまま、別れ話に頷いたのだろう。
そのせいで苦しむことになっているのに。
貞子は、そんな馬鹿の背中をちょっと押してあげたいだけだった

二口、三口。ドリアを冷ましもせずに掻き込む。
口の中が焼けて痛みが走る。喉も、その奥も焼けた様に痛い。
あまりに痛くて涙が出てくる。それでも食べる。
痛くて痛くて涙が出た。ついに貞子の手は止まってしまった。
口が喉が胸が痛い。涙が止まらない。
いたくていたくてたまらない

川;д;川

背伸びをして頼んだイチゴパフェは、食べられることなく溶けて行った。

735 名前:('A`)一方通行タイムマシンのようです:2011/04/06(水) 05:57:35.86 ID:tk36IFDV0
鬱田ドクオの足は軽かった。
それもこれも井戸中貞子のおかげだ。
伝えもせずに終わった想い。
恋人の心変わりを必然として、時間の流れとして受け止めようと一切の抵抗をしなかった。
だが今は違う。井戸中はドクオにタイムマシンをくれた。
このタイムマシンは目に見えない。過去には戻れず未来にしか進めない。
それで充分だった。
今のドクオが変えるべきは過去では無い。今だ。
このままただ静かに消すはずだった灯を、もう一度だけ掲げるのだ。

この体はタイムマシン。未来を切り開くタイムマシン。
鬱田ドクオは走り続けた。
失敗するかもしれない。上手くいかないかもしれない。
それでいい。
後悔にまみれた未来を作りたくない。
鬱田ドクオはタイムマシンだった。
過去をエネルギーに、今を駆け抜け、未来を目指す。
幸せだった過去を!もう一度幸せな未来に!
鬱田ドクオは走り続けた。全てを振りきり、望むべき未来に向かって。


('A`)一方通行タイムマシンのようです
おわり

738 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/04/06(水) 06:00:01.86 ID:tk36IFDV0
以上です

お題はとりあえず
・声
・タイムマシン

こんな時間な上に猿になって申し訳ない
支援をありがとう

存分にぶん殴って欲しい

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貞子……
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